2019年08月01日号
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第四の壁

Fourth Wall

俳優と観客を分けるように舞台と客席を隔てる架空の壁。プロセニアム・アーチと呼ばれる観客席と舞台空間とを隔てる枠は物理的に開放されているものの、あたかもそこに壁があるかのように、役者たちは演技の最中、舞台空間の向こうに観客がいることを意識しないか意識していないように見せかける。18世紀フランスの思想家で百科全書の執筆者であったドゥニ・ディドロの演劇論に由来するとされる「第四の壁」という考えは、観客が舞台上で起こっていることを虚構だと疑わない「不信の宙づり」を可能にし、リアリズムや自然主義を追求する際に、また観客を覗き見の立場に置こうとする際に、要請される。この壁は観客が舞台上の出来事に没入することを可能にし、また同時に舞台の空間を観客のいる空間と隔てる効果をも引き出す。ブレヒトは中国の伝統的な演劇における演技のなかに異化効果を見出し、役者が見られていることの意識をあらわにする一方で、第四の壁の存在を前提にしていない点を評価した。ブレヒトが求めたのは、役者から見られていないというイリュージョンを観客が抱くことのできない「第四の壁」なき演劇だった。

著者: 木村覚

参考文献

  • Dictionary of the Theatre: Terms, Concepts, and Analysis, Patrice Pavis, University of Toronto Press, 1998

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