2019年12月01日号
次回12月16日更新予定

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芸術音楽

Kunstmusik(独), Art Music(英)

音楽外の事象や機能に支配されるのではなくて、自律的かつ純粋な創造的契機によって作られ、純粋観照の対象となりうる音楽。西洋音楽のなかでも、主にポピュラーとそうでない音楽という意味で両者を区別する際に「芸術音楽」という語が用いられることが多い。「芸術音楽」という語は、すでに音楽が「芸術的な音楽」と「芸術的ではない音楽」に分別されるという前提を含んでいる。ここでいう「芸術的」とは、娯楽を始めとする日常性や機能を切り離した、あるいはそれらを遮断した、崇高な精神性のもとに成り立つ自律的な美を意味する。同時に、芸術音楽は演奏会や巨匠信仰によって制度化・慣習化された面を持っている。歴史を遡ると、音楽がこうした自律性を得たのは19世紀、つまり後期古典派からロマン派の時代になってからのことである。礼拝など何らかの機能や用途のもとで書かれたそれまでの音楽は、時が経つにつれてほとんど忘れ去られたが、19世紀になるとメンデルスゾーンによるバッハ・ルネサンスに見られる歴史的再発見によって過去の音楽がレパートリー化される。それに伴い、伝統的規範に基づき、なおかつ詩的情緒を持った音楽が純然たる芸術という地位を獲得した。享受者は単に聴覚的な快を楽しむのではなくて、知識と教養を伴って音楽作品を解釈することも要求される。こうした態度は能動的聴取、あるいは構造的聴取として聴取のあり方にも関わる。しかし、芸術音楽は、文化相対主義の見地からすると西洋文化圏に限られた音楽文化のひとつにすぎない。あらゆる文化の音楽へのアクセスが容易になった昨今、制度化された芸術音楽というジャンルや概念は、その境界を緩やかなものにしつつある。

著者: 高橋智子

参考文献

  • 『新音楽の哲学』, テオドール・W・アドルノ(龍村あや子訳), 音楽之友社, 2007
  • 『音楽史の基礎概念』, カール・ダールハウス(角倉一朗訳), 白水社, 2004
  • 『音楽人類学』, アラン・P・メリアム(藤井知昭、鈴木道子訳), 音楽之友社, 1980

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