2019年06月15日号
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視覚性(ヴィジュアリティ)

Visuality

作品または認識などの視覚的な性質を指す。1988年、ニューヨークにて「視覚と視覚性」と題したシンポジウムが美術史家ハル・フォスターによって組織された。その記録が同タイトルの論集として出版され、『視覚論』という邦題で翻訳されている。ここで「視覚性(visuality)」は、身体的なメカニズムとしての「視覚(vision)」と区別され、社会的・歴史的に構成されるものとして定義された。そもそも作品様式を区分する上での「視覚的(optic)/触覚的(haptic)」という対概念は、美術史家アロイス・リーグルによって提起され、 美術史家ハインリヒ・ヴェルフリンもまた、これを美術史の様式区分において対比的に扱った。このような議論の延長上で、クレメント・グリーンバーグは、線やマチエールといった触覚的な要素を排除することによって作品にもたらされる純粋な視覚性(opticality)を価値基準のひとつに据え、1950-60年代前半にかけて抽象表現主義を擁護する強い批評的枠組みを形成した。先のシンポジウムでは、こうした近代における視覚の特権性を批判の俎上に載せるため、新歴史主義や精神分析、セクシュアリティなど、多角的な方法論を通じた議論が展開されている。とりわけ主体と客体とを対立的に位置づけるデカルト主義や、その認識論的モデルとしての遠近法などが、共通する検討対象として浮かび上がっている。

著者: 池田剛介

参考文献

  • 『視覚論』, ハル・フォスター編(榑沼範久訳), 平凡社ライブラリー, 2007
  • 『リーグル美術様式論 装飾史の基本問題』, アロイス・リーグル(長広敏雄訳), 岩崎美術社, 1990
  • 『グリーンバーグ批評選集』, C・グリーンバーグ(藤枝晃雄編訳), 勁草書房, 2005

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