2019年11月15日号
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視覚性(純粋可視性)

Opticality

美術作品における視覚的効果のこと。または美術作品の表象が、視覚のみの純粋な生起において把握されるとする芸術批評の概念。彫刻家A・ヒルデブラントの理論に触発されたドイツの美学者K・フィードラーが『芸術活動の根源』(1887)などの著作で展開した。フィードラーは、芸術作品の知覚的把握を個々の感覚器官の活動に準じて生起するものと捉え、絵画や彫刻においては、視覚の活動だけが、その顕われを保証するものとした。カント美学に即して、フィードラーは芸術作品の存在論的把握からそれらを記述するのではなく、逆に、見えること(可視性)の主観主義的立場から芸術経験の可能性を探究する。さらに、ある特定の感覚が他の感覚から分離される芸術経験は、諸感覚の多様な結合のもとに営まれる精神生活や慣習的活動とは区別されるとした。このように芸術作品の経験を、ある特定の知覚=視覚に収斂させるフィードラーの姿勢は、『美術史の基礎概念』(1915)を著わしたH・ヴェルフリンに継承された。ヴェルフリンは、フィードラーの議論を踏まえ、個々の時代にはそれぞれ限定的な視覚形式があり、美術作品の様式は、時代に内在する視知覚を表象するとする「様式史」の立場を採った。

著者: 沢山遼

参考文献

  • 『世界の名著.81』, 「芸術活動の根源」, フィードラー(山崎正和、物部晃二訳), 中央公論社, 1979
  • 『美術史の基礎概念 近世美術における様式発展の問題』, ハインリヒ・ヴェルフリン(海津忠雄訳), 慶應義塾大学出版会, 2000

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