2019年08月01日号
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貧しい演劇

Poor Theatre

ポーランドの劇作家イェジュイ・グロトフスキが1965年に論考「貧しい演劇に向けて」のなかで提唱した演劇のあり方。59年にポーランドのオポーレに演劇実験室を創設したグロトフスキは、論考「貧しい演劇に向けて」で、「持てる(富裕の)演劇」として綜合芸術を目指す演劇を批判し、みずからの立場を「貧しい演劇」と称した。文学、絵画、建築、照明、演技などを綜合したものを演劇とみなすことが支配的な傾向であるなかで、グロトフスキはモダニズム的な引き算の考え方を演劇に導入した。技術的に進んでいる映画やテレビのような綜合芸術を追いかけるよりも、音楽・衣装・装置・化粧といった、かならずしも演劇的ではない要素を捨て、あるいは戯曲といった不要な演劇的要素を排除し(コメディア・デラルテをその前例とみなす)貧しくなることで、俳優と観客の関係という演劇の本性そのものを浮かび上がらせ、それによって俳優と観客とのあいだの人間的なかかわりあいをめぐる微細な探究を可能にするべきであるとグロトフスキは考えた。さらに彼は「聖なる」俳優という概念を呈示した。宗教や伝統における古代的な状況を利用し「禁忌となっているものの侵犯」を行なうことで、観客に心理的なショックを与え、俳優は「自然な」行動の過程では曖昧にされたままの真実をあらわにする演劇を上演しようとした。この論考は反響を呼び、2年後の67年にはアメリカの演劇雑誌『TDR』に掲載された。

著者: 木村覚

参考文献

  • 『実験演劇論 持たざる演劇めざして』, イェジュイ・グロトフスキ(大島勉訳), テアトロ, 1971

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