2019年12月01日号
次回12月16日更新予定

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逆遠近法

Inverted Perspective

いわゆる遠近法とは逆の視点で捉えた遠近法のことで、前景に置かれた対象を目から遠ざかるほどに拡大する、つまり後景に行くほど逆八字形に開くように描く技法を指す。西洋では、特にルネサンス以前の絵画に頻繁に用いられ、ビザンティン美術の影響を受けたオットー朝美術のミニアチュールなどに作例が認められる。つまり中央消失遠近法が受け入れられるようになる以前は逆遠近法が主流であったわけだが、一見科学的に誤りのようにも思える逆遠近法も、われわれの視覚的経験に基づくものと考えられる。それは、実際にわれわれの眼は、手前に置かれた物を平行線に対して奥方向に短縮して見ることはなく、平行のまま、ないしは拡散して捉える傾向にあるという点である。
またこの技法は、中央消失遠近法の登場によりその役目を終えたためか、西洋美術よりも広くアジア地域、特に東洋の美術において多く用いられる傾向にある。古代インド美術や中国、日本の美術に見られ、中国では、俯瞰図法を補充する技法として後漢末~魏晋時代の頃に登場し、主に人物の背景を広く表現するために用いられた。やがて、権威を表わす表現として身分の高い人物の肖像画などに用いられるようになり、以降も仏画の一部に見られるなど総じてモニュメンタルな印象を与える表現方法のひとつとして使用されていたようである。日本においては、やまと絵、その俯瞰図法の一端を担うことからとりわけ絵巻物に適していたが、浮世絵や琳派の作品にも確認できることから、東洋的、日本的な空間表現には最も適した技法であったことがわかる。

著者: 小野寛子

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