2019年06月15日号
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運動感覚

Kinesthesia(kinaesthesia), Kinesthetic Sense

人が自分の身体の各部位の重さや動作を、筋肉や「内的な耳」を通して知覚すること。18世紀フランスの感覚論哲学者コンディヤックが人間のもっとも根本的な感情と呼び、「第六感」とも称されている。運動感覚の諸要素は、言語を媒介することなく、パフォーマーが観客と交わすコミュニケーションに関係していると考えられてきた。『ニューヨーク・タイムズ』の批評家ジョン・マーティンは1930年代、モダン・ダンスのダンサーが踊りを通して筋肉組織の伸縮性や伸張性を示すとき、観客の運動感覚に対して感染的な反応を起こすことに着目した。まるでレモンをかじる人を見て顔をしかめてしまうといった出来事と類似の「内的模倣」がダンスを見る観客の内に起きているとマーティンは考え、ダンサーは内的模倣を観客にうながし、観客の内に自分の感情を表現しているととらえた。また彼によれば、運動感覚は心的構造における無意識的なものとつながっており、そこで生じる衝動は非常に基本的なものであるがために言語化できないものである。イサドラ・ダンカンのダンスを初めて見たとき「まるで私自身が、その舞台上で踊っているかに思えた」と回想記のなかで義理の姉であるマルゲリタが語っているような、観客とダンサーとが同一のものであるかのように感じたという経験は、こうした内的模倣の一例と言える。

著者: 木村覚

参考文献

  • Dictionary of the Theatre: Terms, Concepts, and Analysis, Patrice Pavis, University of Toronto Press, 1998
  • Modern Dance Terminology, Paul Love, Princeton Book Company, 1997
  • 『イサドラ・ダンカン芸術と回想』, シェルドン・チェニー編、イサドラ・ダンカン(小倉重夫訳), 冨山房, 1977(原著1928)

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