2019年08月01日号
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音響彫刻

Sound Sculpture

音響を構成要素として用いる立体作品のこと。何らかのレヴェルで視覚対象となるオブジェを制作し、その構成要素として音響を組み込むもの。「新しい音楽」(ある種のケージ以降の実験音楽)の別称として用いる場合(1970年代のB・フォンタナなど)もあるが、その場合、「彫刻」という言葉は比喩的な意味で使われている。古くはデュシャンが残した「音楽的彫刻」についてのメモがあるが、視覚芸術に音響を組み込んだ動向の端緒として言及されるのは、フランスの楽器彫刻家バッシェ兄弟である。彼らは、鑑賞者が自由に触れて音を出せる楽器として、彫刻を制作した。また、美術館に音響を導入した先駆的事例としては、ジャン・ティンゲリーの《ニュー・ヨーク賛歌》(1960)やロバート・モリスの《自分が作られているときの音を発する箱》(1961)などがある。また、ある種の創作楽器(フルクサスのJ・ジョーンズの自動演奏楽器など)も視覚的鑑賞物として展示される。70年代以降は音響を組み込む視覚芸術は珍しいものではなくなり、80年代以降(特に80年の「眼と耳のために」展以降)は、音響彫刻のための展覧会がたくさん企画されるようになる。美術館にも聴覚的要素を取り込むことで視聴覚のバランスの是正を図ろうとするこうした傾向に、美術館こそが大文字のアートを担うものであるとするある種の視覚芸術至上主義を見出すことは可能かもしれないが、実際上、隣同士の作品の音響が互いに邪魔しあう可能性もある音響彫刻を従来の美術館で展示することは容易な作業ではない。また、音響彫刻をコンサート・ホールで提示することが困難なことも確かである。このように音響彫刻は、芸術作品を展示する場について再考することを要請する面も持つと言えよう。

著者: 中川克志

参考文献

  • Sound Sculpture: Intersections in Sound and Sculpture in Australian Artworks, Ros Bandt, Craftsman House, 2001
  • Sound Sculpture: A Collection of Essays by Artists Surveying the Techniques, Applications, and Future Directions of Sound Sculpture, John Grayson, A.R.C. Publications, 1975
  • Environments of Musical Sculpture You Can Build: Phase 1, John Grayson ed., Aesthetic Research Centre of Canada, 1976
  • 『サウンドアート 音楽の向こう側、耳と目の間』, アラン・リクト(木幡和枝監訳、荏開津広、西原尚訳), フィルムアート社, 2010

参考作品

  • 《ニュー・ヨーク賛歌(Homage to New York)》, ジャン・ティンゲリー, 1960
  • 《Box with the Sound of its Own Making》, ロバート・モリス, 1961
  • 《Kirribilli Wharf》(『Australian Sound Sculptures』収録), ビル・フォンタナ, 1976

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