2019年12月01日号
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食寝分離

Separation of Eating and Sleeping Rooms

住宅において、食べる場所と寝る場所を分離しようという考え方。大量の住宅供給が求められた第二次大戦後に、わが国の住宅平面計画の基本理念のひとつとなり、現在まで大きな影響を与えている。食寝分離の利点としては、布団の埃が舞う中での食事を避けるといった衛生面の改善、家族内の生活時間帯のずれ(深夜帰宅・早朝出勤など)に対応した食事・就寝時間の確保、食卓が固定されることによる家事労働の軽減等が挙げられる。建築家・建築学者の西山夘三は1942年に発表した論考「住居空間の用途構成に於ける食寝分離論」において、食室と寝室を分けて設けることは「秩序ある生活にとって最低限の要求である」とし、「食寝分離」の必要性を説いた。居住者が生活の便利のために、寝るスペースを過密にしてでも食室と寝室を分離している実態を住み方調査から明らかにし、論理の裏付けを行なったのである。そして、当時求められていた極小住宅の計画においても、昼と夜の動線を使い分けることで食寝分離が可能であると説き、これを住宅改善の基本原則とした。それまでは日本の住宅は畳敷きが主体であったため、その用途を多様に転用できるとする「食寝転用」論が主流だったが、調査分析に基づく西山の食寝分離論は、それを押し退け、戦後の住宅平面計画の主流となった。そして、日本住宅公団の公営住宅「51C型」などの標準設計に反映されることで、広く定着していった。

著者: 藤本絵理(大阪市立大学倉方研究室)

参考文献

  • 『これからのすまい 住様式の話』, 西山夘三, 相模書房, 2011
  • 『建築学会大会論文集』, 「住居空間の用途構成に於ける食寝分離論」, 西山夘三, 社団法人日本建築学会, 1942
  • 『新・住居学[改訂版]生活視点からの9章』, 渡辺光雄、高阪謙次編著, ミネルヴァ書房, 2005

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