2019年09月01日号
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FSA(農業安定局)プロジェクト

Farm Security Administration (Photography Program)

1929年から始まったアメリカの大恐慌とその後の旱魃で困窮を極めた農村地域の惨状を記録した写真史上最大規模の国家プロジェクト。35年、アメリカ政府は再入植局を開設、37年には農業安定局(Family Security Administration、略称=FSA)と改編し、恐慌下の農民の実情を記録するプロジェクトを立ち上げる。歴史記録部のディレクターとなった経済学者のロイ・ストライカーのもと、ウォーカー・エヴァンズやドロシア・ラング、カール・マイダンスらによる写真家チームが組織され、豊富な資金のもと、疲弊した南西部の農業地帯へとレンズが向けられた。ルイス・ハインによる貧民街や労働者の写真を下敷きにしたこの調査記録は、苦難に立ち向かう無名の人々の姿と国難に直面するアメリカとを重ね合わすことで、大きな反響を巻き起こした。アメリカ国民の強い関心を引きつけたこれらの写真群は、写真の視覚的伝達力を広く認識させただけでなく、フランクリン・ルーズベルト大統領が推し進めたニューディール政策への肯定的世論形成を形成するキャンペーンとしても機能した。歴史記録部が戦争情報部に改編される42年までに27万点以上にも及ぶ写真が撮影され、アメリカ国民の集合的記憶を形成した。

著者: 小原真史

参考文献

  • 『写真の歴史 表現の変遷をたどる』, イアン・ジェフリー(伊藤俊治、石井康史訳), 岩波書店, 1987
  • 『現代アメリカ写真を読む デモクラシーの眺望』, 日高優, 青弓社, 2009

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