2019年06月15日号
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TVアート/ネットワーク・アート

TV Art/Network Art

TV放送やネットワークを使用した電子映像によるアートのこと。その萌芽は1959年に書かれた佐々木基一の『テレビ芸術』などに見ることができる。佐々木は同書のなかで、それまでの映画とは違った、観客の参加による新しい映像芸術形式としてTV=電子映像をすでに見ている。TVのネットワークを大々的に使用した記念碑的作品としては、ナム・ジュン・パイクによる『バイ・バイ・キップリング』(1983)と『グッド・モーニング・ミスター・オーウェル』(1984)が挙げられるだろう。この両プロジェクトは、当時まだ試験的なものだった衛星放送を通じてニューヨーク、パリ、ソウル、東京などを結んで、さまざまなアーティストが生放送でコラボレートし合う(あるいはそれに失敗する)という壮大な実験であった。この時期のパイクの実践には、電子メディアによって世界中がつながることで人々が解放され、同時に大衆が愚昧化することを示すというような、ある種のアイロニーを含んだオプティミズムが目立つ。その後1990年代以降のデジタル・メディア台頭の時代には、そのようなネットワーク・アートのプロジェクトはもっぱらインターネットを中心として発展させられていくが、その時期にメディアの時代を謳ったほとんどの論者たちは、マクルーハンの「グローバル・ヴィレッジ」の概念を振りかざし、技術が世界を解放するというユートピア的ヴィジョンを声高に述べていた。例えばそれは日本ではNTTの主催するメディアアート・センターの機関誌だった『InterCommunication』に象徴され、情報メディアの擬似的な民主性を称揚するオプティミスティックな言説が展開された。インターネットがグローバルなデモクラシーや表現の解放に寄与するという単純な神話が完全に崩壊し、ネットワークのほとんどがGoogleなどの大資本に吸収された現在、ネットワーク・アートの新しい展開がどこに向かうのか注目される。

著者: 河合政之

参考文献

  • 『テレビ芸術』, 佐々木基一, パトリア書店, 1959
  • 『バイ・バイ・キップリング』, ナム・ジュン・パイク、和多利志津子監修, リクルート出版部, 1986
  • 『あさってライト Icarus=phoenix』, ナム・ジュン パイク、伊東順二, PARCO出版局, 1988
  • 「Japan ビデオ・テレビジョン・フェスティバル」カタログ, ビデオギャラリーSCAN, 1987、1989、1992
  • 『InterCommunication』, NTT出版, 1992-2008

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