2019年06月01日号
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VOCA展

VOCA Exhibition

1994年から続く、「平面」作品を対象とした展覧会。正式名称は「VOCA 現代美術の展望・新しい平面の作家たち(Vision Of Contemporary Art)」。「ヴォーカ」と読ませるが、「ボカ」と簡略されることも多い。第一生命保険株式会社の全面的な支援を受けながら、上野の森美術館を会場に毎春催されている。全国の美術館学芸員や美術記者、美術評論家などによって推薦された40歳以下の若手作家の全員に出品を依頼し、出品されたなかから選考委員会がVOCA賞、VOCA奨励賞、佳作賞、大原美術館賞を授賞する。このうちVOCA賞およびVOCA奨励賞受賞作品は第一生命保険相互会社に買い上げられ、同本社の1階ロビーで公開されるほか、全入賞者に対して第一生命南ギャラリーでの個展の機会が提供される。1956年以来、断続的に行なわれている「シェル美術賞」と並ぶ、新人画家にとっての登竜門である。VOCA展のもっとも大きな特徴は、作品の良し悪しを判定する基準がモダニズム絵画論で一貫している一方で、選考された作品はじつにヴァラエティに富んでいることにある。選考委員会の顔ぶれは毎年入れ替えられているものの、比較的継続して務めているのは、高階秀爾(大原美術館館長)、酒井忠康(世田谷美術館館長)、建畠晢(京都市立芸術大学学長)、本江邦夫(多摩美術大学教授)の4氏。それぞれの立ち位置は微妙に異なっているにせよ、彼らの批評的立場は絵画の本質を絵画によって追究するモダニズム絵画論に依拠している点では一致している。実際、これまでのVOCA賞受賞者を振り返ると、淡い色彩によって画面を構成した抽象画が数多く評価されていることがよくわかる。ところが、そうした原理原則を守りながらも、その適用範囲を臨機応変に拡大することによって現代性を獲得しようとしているところに、この展覧会のもうひとつの面がある。写真のやなぎみわ(1999)や、日本画の山本太郎(2007)、三瀬夏之介(2009)がVOCA賞を受賞したことは、その多様性の顕著な現われにほかならない。さらに入賞者も含めてみると、大岩オスカール幸男(1995)や曽根裕(1997)、石田徹也(2001)、照屋勇賢(2002)、中ザワヒデキ(2003)、HEART BEAT DRAWING SASAKI、中山ダイスケ(ともに2004)、蜷川実花(2006)、山口晃(2007)、淺井裕介、高木こずえ(ともに2009)、清川あさみ、齋藤芽生(ともに2010)など、じつに多士済々の顔ぶれがそろっている。こうした多様性を可能にする条件のひとつが「平面」というフレキシブルな概念だ。これが第一に「絵画」を示していることは暗黙の了解とされているが、それは時として「写真」に適用されることもあるし、場合によっては「映像」を含めることすらある。モダニズム絵画論が現在の絵画にそぐわなくなっているにもかかわらず、それらを評価する基準としていまだに活用されている点については批判も多い。しかし、このねじれの隙間から数多くの若く有望なアーティストが輩出されてきたこともまた事実である。つまりVOCA展とは、実作の面でも批評的言説の面でも、美術をめぐる功罪が凝縮したトポスとして機能している。

著者: 福住廉

参考文献

  • 『いまいるところ/いまあるわたし』展カタログ, 「VOCA展に託された未来」, 谷新, 宇都宮美術館, 2006
  • 『VOCA1994-2003 10周年記念作品集』, , 「VOCA展」実行委員会ほか編, 「VOCA展」実行委員会, 2003
  • 『国立国際美術館ニュース』第176号, 「絵画のゼロ年代 VOCA展選考所感の言説分析から」, 福住廉, 国立国際美術館, 2010年2月

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