バックナンバー
2019年06月15日号のバックナンバー
フォーカス
〈資料〉がひらく新しい世界──資料もまた物質である
[2019年06月15日号(鏑木あづさ)]
展覧会場に置かれている作家の直筆の手紙やスケッチ、当時のパンフレットやチラシ。以前は、展覧会場の終盤に、興味のある方だけご覧ください、とでもいうかのようにひっそりと置いてあったものが、いまでは作品と同じ並びで展示されていることがある。アーカイブや二次資料と呼ばれるそれらから、私たちは作品からだけでは得られない面白さや新たな発見を得る。この春、リニュアール・オープンした美術館のコレクション展で、そんな展示をご覧になった方も多いと思う。美術館の図書館司書として二次資料の収集・整理・保存・公開などに関わってきた鏑木あづさ氏に、展覧会のなかの資料展示についてご寄稿いただいた。(artscape編集部)
キュレーターズノート
「わたし」が発するとき──
「彼女たちは叫ぶ、ささやく─ヴァルネラブルな集合体が世界を変える」展
[2019年06月15日号(正路佐知子)]
前号で紹介した「インカ・ショニバレCBE:Flower Power」展(福岡市美術館)の会場最後を飾ったのは、《桜を放つ女性》と題された新作だった。ショニバレは本作に「女性のエンパワーメント」という思いを込めており、彫刻頭部の地球儀には19-21世紀に女性の権利獲得の運動を率い、あるいはそれらの運動に影響を与えた女性たちの名前が92名分記されていた。そのなかに、東京大学入学式での祝辞が話題となった上野千鶴子の名が含まれていたことや作品そのものの造形的なインパクトから、本作品は会期中注目を集めたが、本展来場者の反応で特に印象的だったのは、女性たちがショニバレの作品を見るなかで文字通り励まされ、あるいは社会に対して漠然と抱いてきた違和感を認識し、覚醒していくさまだった。
指差す権力への密やかな抵抗
[2019年06月15日号(鷲田めるろ)]
東京の八丁堀にあるギャラリーnca | nichido contemporary artにてキュレーションした「Identity XV」展が始まった。ncaは、老舗の日動画廊のコンテンポラリーアート部門で、2003年以降、毎年外部のキュレーターが自由に企画するシリーズ「Identity」を開催している。これまでの「Identity」展には、サブタイトルがついていた。例えば、「崇高のための覚書」(天野太郎、2016)、「水平線効果」(遠藤水城、2018)などである。しかし、私は「Identity」というシリーズのテーマ自体に向き合いたいと考え、今回、サブタイトルをつけなかった。また、作家の数も、これまでは多くの回が5人から9人程度だったが、今回は3人に絞り、それぞれの表現をしっかりと見せたいと考えた。
トピックス
オルタナティヴ・アートスクール
━━第5回 受講生たちが学ぶオルタナティヴ
[2019年06月15日号(白坂由里)]
4回にわたりレポートしてきた連載「オルタナティヴ・アートスクール」。最終回となる今回は、これまで取材した4つのスクールに通う受講生にインタビューを行ない、受講の動機や感想などをうかがった。積極的に踏み込んで作品を見ること、受け手から送り手側になる経験など、さまざまなエピソードをお聞きするうちに、いま、彼らがアートスクールに何を求めているのか、さらにはアートの効用やアートプロジェクトの課題も浮かび上がってきた。