2024年度企画展Ⅰ 研究室訪問シリーズⅤ「描かれた朝鮮通信使」

 朝鮮通信使は、朝鮮国王からの国書をもたらすために、室町時代から江戸時代にかけて来日した使節団である。今日では遠隔地間で情報を伝達する手段に対して用いられる「通信」 という言葉だが、当時は単なる音信のやり取りという意味以上に「信(よしみ)を通ずる」、つまり日本と朝鮮が親しい関係を構築するための使節という意味が込められていた。
 本展覧会では、尹芝惠研究室(西南学院大学国際文化学部)の協力のもと、朝鮮通信使に 関する記録や朝鮮通信使が描かれた絵画作品・工芸作品などを展示する。また、ユネスコ 「世界の記憶」登録や尹芝惠研究室の活動を含む、朝鮮通信使をめぐる現代の活動についても紹介する。

<協力研究室からのメッセージ>
 近世の朝鮮通信使は、朝鮮国王が江戸幕府に対して派遣した使節団で、1607年から1811年の間に計12回にわたって来日しました。彼らは日朝外交という政治のための使者であると同時に、学術・芸術・技術などの文化交流を担った存在でもあります。
 日韓関係を表現するとき、しばしば「近くて遠い国」という表現が用いられますが、古来交流を重ねてきた日本と韓国の間には、様々な問題が起こりました。しかし、それはあくまでも政治的な側面から見た軋轢であり、民間レベルでは良好な関係を築いてきたこともまた紛れもない事実です。今日でもK-POPなどを通して韓国に興味持つようになる人が多くいることを考えると、「近くて遠い国」を理解するためには、まず文化的な交流が必要だという
ことがよく分かります。
 この江戸時代の日朝関係に関する展覧会が、皆様のよき学びの場となり、ひいては日韓の歴史に対する理解の一助となれば幸いです。
(西南学院大学国際文化学部国際文化学科 准教授 尹芝惠)