川久ミュージアムでは、2024年9月6日(金)から10月7日(日)まで、和歌山県紀南出身の大博学者・南方熊楠が保全した神島を眼の前に、いにしえの時代からの黒潮海流を通じたアジアと日本列島の「水」を巡る交流を示す物語、「水の越境者たち」展を開催致します。なお、同展では、紀南アートウィーク実行委員会が、ディレクション、キュレーションを担当します。

本展では、クヴァイ・サムナン(プノンペン在住)やティタ・サリナ(ジャカルタ在住)等の東南アジアを代表するアーティストの海や河川を巡る多義的な作品とともに、主に黒潮・対馬暖流域の浦々で滞在を重ねながら、海を基点とした人間や世界のあらわれを母胎にした作品を制作し続ける山内光枝(福岡在住)の作品との応答によって、アジアと日本列島において古くからあって、そして、新しくもある「水」を通じた交流の可能性を提示します。

[展示概要]
会期:2024年9月6日(金)から10月7日(日)
詳細は、川久ミュージアムwebサイトよりご確認下さい。
主催:川久ミュージアム
ディレクション、キュレーション:紀南アートウィーク実行委員会
協力:アウラ現代藝術振興財団、Artport株式会社

アーティスト:

山内光枝(YAMAUCHI Terue)
1982年生まれ、福岡県在住。映像、写真、ドローイング、インスタレーションによる作品を手掛ける。2006年ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ(イギリス)BAファインアートを卒業。2013年には済州ハンスプル海女学校(済州島・韓国)を卒業後、2015年に文化庁新進芸術家海外研究員として、2016年に国際交流基金のアジアセンター・フェローとしてフィリピンに滞在。初の長編映像作品が東京ドキュメンタリー映画祭2019で奨励賞を受賞。最近作「信号波」(2023)は日本統治下の釜山に暮らした自身の家族史に向き合うセルフドキュメンタリー。近年の主な展覧会に、「日本パビリオン」光州ビエンナーレ、韓国(2024.9予定)、「泡ひとつよりうまれきし 山内光枝展」対馬博物館(2024)、「水のアジア」福岡アジア美術館、福岡(2023)、「Spinning East Asia SeriesⅡ: A Net (Dis)entangled」Center for Heritage Arts & Textile: CHAT、香港(2022)がある。

ティタ・サリナ(Tita Salina)
1973年生まれ、ジャカルタ在住。インドネシア人アーティストのティタは、無秩序な都市開発と公害等のジレンマに直面する巨大都市ジャカルタの公共空間に対して、パフォーマティヴな介入を通して想像力を喚起させる。現在、パートナーでもあり、アーティストでもあるイルワン・アーメットとともに、自然災害が最も発生しやすい環太平洋火山帯の地政学的混乱、根強いイデオロギー的な暴力によって引き起こされる課題に対するプロジェクトを展開している。ティタは、国内外のレジデンスや展覧会に参加しながら、惑星的な懸念について思索し、人間と自然の関係やエコロジーに関連した芸術表現を行っている。

ゴック・ナウ(Ngoc Nau)
1989年生まれ、ホーチミン在住。ベトナムの現代アーティストとして近年世界的に注目されるナウは、3Dソフトウェアとオープンソースの素材を使い、没入感のある視覚体験を生み出している。ビデオ・インスタレーションにとどまらず、ライトボックス、ホログラムや拡張現実など、他の最新テクノロジーの取り込みにも余念がない。彼女の生活体験や多様なコミュニティからのインスピレーションを踏まえて、ナウの作品は地域の文脈に深く根ざした視点を具現化し、世界中の観客への共感を呼び起こそうとする。ナウの作品は、一般的な歴史的・社会的ナラティブの再検証を促しつつ、現代社会の発展の複雑さと問題の本質を掘り下げることによって、過去に対する認識と未来へのヴィジョンを新たな方向へと向かわせる。

クゥワイ・サムナン(Khvay Samnang)
1982年生まれ、プノンペン在住。カンボジアを代表する現代アーティストのクゥワイ・サムナンは、クメール古来の伝統的文化儀式や神話を踏まえて、ユーモラスで象徴的なジェスチャーを駆使しつつ、歴史や現在の出来事に対する新しい視点を提示する。あらゆるメディアを包括する彼の作品は、植民地主義とグローバル化における人道的な問題、環境や環境を巡る問題や生態系への影響について焦点を当てている。

リム・ソクチャンリナ(Lim Sokchanlina):
1987年生まれ、プノンペン在住。カンボジアを代表するアーティストの一人であるリム・ソクチャンリナは、物事や精神の境界を思索し続けている。リムは、写真、映像、インスタレーション、パフォーマンスを用いた、ドキュメンタリーとコンセプチュアルな実践を横断する作品を制作し続けている。彼は、世界との関係におけるカンボジアの様々な社会地政や環境的変化に目を向けながら、それらを芸術表現に反映している。

メッチ・チューレイ&メッチ・スレイラス(Mech Choulay& Mech Sereyrath)
1992年(チューレイ)、1993年(スレイラス)生まれ、プノンペン在住。メッチ姉妹は、カンボジアのカンダール州で生まれの若手アーティスト・ユニットである。チューレイは、映像作家、ジャーナリストであり、ジャーナリズム、写真、映画の分野で豊富な経験を持つ。2024年にシンガポールのObjectifsで個展を開催した。他方、スレイラスは、「Element」、「Gratitude」、「When the Sun Reaches the River」などの写真シリーズを制作し、2023年の香港国際写真祭に出展している。このような写真作品のほかに、短編映画《The Expired》等も制作し、2023年の釜山映画祭で上映会を行った。