農具の前でおしゃべりに興じる少女たちを描いた《庭前小景》(1931年)は、大正から昭和にかけて活動した日本画家・森田もりた沙伊さい(1898-1993)による作品です。沙伊は「よそいきでない、自然のままの姿を描きたかった」と語り、生涯を通じて子どもや犬、小鳥、花といった身近で素朴な題材を描きました。佐久市出身の洋画家・桜井さくらい 寛ひろし(1931-2025)は、戦中から終戦直後にかけて少年期を過ごした欠乏感から、《二つのフライパン》(2009年)といった目玉焼きのシリーズを描きました。桜井にとって目玉焼きは生きることの意味そのものだったのかもしれません。佐久市出身の実業家・油井ゆい一二いちじ(1909-1992)は、株式会社美術年鑑社を設立する前に風呂敷画商として日常を彩る美術品を扱っていました。掛け軸を風呂敷でかついで各地をまわり、「美によって生活に潤いをもたらす感性や心の余裕、美しいものを愛する気持ち」の大切さを伝えました。油井が蒐集した作品群は佐久市へ寄贈され、現在、佐久市立近代美術館コレクションの根幹となっています。
本展では、佐久市立近代美術館コレクションからこれら「暮らし」に関連した作品約100点を紹介します。何気ない日々に目をむけた作家たちの作品の数々をご覧ください。