Artist :
今泉奏 lmaizumi So
吳庭鳳 Wu Ting Feng



タイトル「鄰|隣 人」について   吳庭鳳

「となり」を表す字には「隣」と「鄰」のふたつがあります。

日本ではどちらが自然なのか、少し迷いました。
台湾で使われる繁体字では「鄰」の字を使うことが一般的です。

でも、異体字が存在していること自体が、今回の展示に少し重なると感じました。

私の作品には、水面や映り込みのようなモチーフがよくあります。
まるで倒影のように、同じものを見ていても、それぞれが異なる方向へイメージを広げていくように考えています。
鏡の表と裏のような関係とも思っていて、
「鄰」と「隣」の二つの字を並べてみたところ、なんだか面白いテーマになりそうな予感がしました。



Statement


「展示に寄せて」

社会とのかかわりは、地図のない航海のようだ。
少し大袈裟な喩えかもしれないが。

わたしの作品は舵取りのきかない船のようだと思っている。
作品を介して他者のつながりを感じながらも、やはり完全には繋がりきれない。
作中の人々 (虫も含む) は曖昧な表情を浮かべながら、彷徨い、どこか疲れているようだ。

また、同じ船に乗っていたとしても、見ている景色や、進もうとしている方向は人それぞれだろう。

私は、そうした分かり合えなさ、憧れや執着、妬みといった相反する感情、ユーモア、情緒を表現したい。

航跡は、あみだくじの線のように、見えない分岐や偶然を含みながら続いていく。

今泉奏 2026.5.27



「うつろいのほとり ー事物が変化していくその途中 (さなか)

それは、光がふと落ちた瞬間、風が向きを変えた瞬間、まだ名前のない感情が生まれる一瞬。
世界は、そんな微細な時のうつろいの中で、静かに変わり続け、私はいつも、その「出会うこと」と「消えること」との間 (はざま) を生きているように感じます。

今回のシリーズは、2026年2月から4月にかけて過ごした、
日本・群馬、榛名湖の山中での滞在制作から生まれました。
私は、冬から春へと移り変わる季節の中で、榛名湖で日々制作していました。
山のふもとからバスに乗り、標高が上がるにつれて景色が白く移り変わっていく——

ああ、ここはまだ雪の季節なのだ、と気づいたあの瞬間を今でも鮮明に覚えています。

植物、石、湖面、木、星の光。

自然が山々に残していった、そんな痕跡を拾い集めました。
それらは本来、一瞬にして変容し、その形を留めておくことが難しく、
私たちは出会ったその瞬間時の姿を記憶するしかありません。

私は、その「出会った瞬間」を描き留めたいと思いました。
作品に繰り返し登場する「手」は、私自身の象徴です。手で支え、触れ、抱きしめる行為は、
私にとって留めておきたい瞬間そのものです。
しかし、どれほど抱きとめようとしても、ものたちは静かに離れていってしまいます。
近づくことと離れていく、その間 (あいだ) の、言葉にできない境目に接しながら、
その端緒を、自分の感覚を通してそっと浮かび上がらせようとする試みです。」

吳庭鳳



Opening Reception : 6/20 (sat) 16:00 − 19:00

Gallery Talk : 7/4 (sat) 14:00 − 15:00
作家によるトークセッション