みんなのギャラリーでは10年ぶりとなる、美術作家・奥天昌樹の個展。
本展では新作を中心に近年の作品を交え、これまでの制作の軸をたどりながら、その先に生まれつつある新たな展開を紹介します。

ーーー

奥天昌樹 Masaki Okuten

2012年武蔵野美術大学造形学部油絵学科油絵専攻卒業。
線の成立ちや集合的無意識など原初的な視覚をテーマに、芸術が人々にもたらす事象を探求する。ミニマルで意味化されていない痕跡としての状態を自身の絵画と位置付け、人々が抽象画に意味を見出そうとする習慣そのものを揺さぶる。

​近年の主な展示に、GINZA SIX 蔦屋書店、代官山 蔦屋書店、Gallery10 TOHでの個展、J12 contemporary art by Jason(香港)、Gallery Etherでのグループ展など。GEISAI#18ホルベイン賞(2013)、第3回Dアートビエンナーレ優秀賞(2014)、viaart2009 KURATA賞(2009)を受賞。

ーーー

何層にも絵具を重ね、制作過程そのものを画面に残す奥天のスタイルは、予め完成形を定めるのではなく、色を置き、線を引くたびに変化する画面と向き合いながら、即興的に展開していきます。

完成した画面が鑑賞者によって何らかの具体的なイメージとして捉えられる可能性を受け入れながらも、奥天自身は特定の何かを描こうとはしてきませんでした。本展ではその姿勢を保ちながら、あえて「景色」という前提を設けることで、これまでとは異なる絵画の見え方を探ります。

展覧会タイトルの「nowhere」は「どこでもない場所」を意味すると同時に、「now here=いま、ここ」と読むこともできます。現在地は示されているにもかかわらず、それがどこなのかは特定されていない。本展における「景色」もまた、具体的な場所を描写するものではなく、鑑賞者が画面の前に立ったその瞬間に現れる、どこでもない現在地として提示されます。

奥天が制作の過程で、目の前にある画面だけを手がかりに次の一手を探ってきたように、鑑賞者もまた完成した作品を前に、その画面がどこへと開かれているのかを探ることになります。作家が制作時に立っていた「現在地」と、鑑賞者が作品を見る「現在地」が重なり合うことで、「nowhere」は制作と鑑賞の双方を結ぶ場所として立ち現れます。