三岸好太郎「海と射光」、萬鐵五郎「裸体美人」、古賀春江「海」、村山知義「コンストルクチオン」……、続々登場する日本の前衛名品中の名品に、思わずかっこいいわぁとため息をもらしつつ、例えばアカデミズムの陣営たる白馬会の会場にアール・ヌーヴォーのポスターが飾られていたこと、例えばヨハネス・イッテンの書のごときドローイング、例えば同じ萬の南画的作品等々、知られざる前衛の姿に目を見張る。
サブタイトルにART INTO LIFE。この展覧会は、LIFE=生活をキーワードに、日本の風土に根ざした生活・文化環境と前衛美術との関係や、あるいは一方通行ではない西洋との影響関係を検証し直すことで、ただ西洋の受容史として語られがちであった日本の前衛美術に新たな視点を持ち込もうという企画である。絵画作品だけではなく、建築、工芸、写真などより生活に関わりの深いジャンルや、美術教育の問題に関わるものまで、海外の関連作品も含め、300点近くにより構成されている。様々なジャンルの作品により「前衛」をめぐるさまざまな動きの交錯を横断的に眺めることで、この国の「土着的な」生活自体の揺れ幅、そしてその振幅もといこの国特有のズレや勘違いさえ巻き込みながらともかくも「前進」していった時代、LIFEも、ARTも、それこそグローバルに(!?)変化していった時代の高揚を、改めて見たようにも思う。
会場内に三岸好太郎のアトリエが再現されるらしいとの噂は事前に耳にしていたが、何にも先んじて入り口にあるとは、しかもスリッパ履いてお邪魔することになるとは思わなかった。生活空間にいきなり引き入れるというその導入もさることながら、会場全体を見渡しても、額縁の矩形のならぶ絶妙な間隔から、休憩用の四角いソファの配置(いつもの京都近美のソファではあるのですが)に至るまで、一貫したこだわりが感じられ、シャープに整えられた応接間のように何とも居心地の良い空間がつくられていた。ある意味、展示の手法と内容とが、相似形をなしているよう。時代のモダニズムの申し子たる美術館のポジティブな明日についても色々と考えさせられた。流石です。