2017年06月15日号
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「世界像の時代」マルティン・ハイデガー

“Die Zeit des Weltbildes”(独), Martin Heidegger

ドイツの思想家マルティン・ハイデガーによる、1938年6月9日にフライブルクで行なわれた講演をもとにした論文。『Holzwege(杣径)』(1950)などに収められている。メディアと技術による支配が顕わになる表象の時代として現代を認識するその考察は、現在までで最も優れたメディア社会についての批判的思考のひとつということができるだろう。このなかでハイデガーは、人間が主体化すると同時に、他のものすべてを表象として捉えるようになるプロセスとして近代を捉え、そのように表象としてくくられた世界を「世界像」と呼んだ。そして、近代的主観性がメディアを通じた共同性を持つにいたって、ついには「惑星的帝国主義」として完成するという。その結果人類には画一性がもたらされ、技術とメディアによって世界全体が表象として主観主義の支配の対象となり、全体性において主観は客観に没入することになる。このように主観と客観が没入的に一致した全体主義的世界では、すべては統合された表象へと一元化することになる。そこでは、例えば単なるヒューマニズムや進歩主義は、それを根源から思考し批判することができず、より表象的な世界の完成に寄与するだけである。同時期の書物としてアドルノとホルクハイマーによる『啓蒙の弁証法』(1947)があるが、これらの思想家が政治的な対立を超えて、ともに似たような観点から情報化社会・消費社会への批判を展開した事実に留意すべきである。

著者: 河合政之

参考文献

  • 『ハイデッガー選集13 世界像の時代』, マルティン・ハイデッガー(桑木務訳), 理想社, 1962
  • 『ハイデッガー全集第5巻 杣径』, マルティン・ハイデッガー(茅野良男、ハンス・ブロッカルト訳), 創文社, 1988
  • 『情報社会を知るクリティカル・ワーズ』, 田畑暁生編, フィルムアート社, 2004

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