2017年08月01日号
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「大きな物語」の終焉

Fin des “grands récits”

「大きな物語」とは、フランスの哲学者ジャン=フランソワ・リオタール(1924-98)が『ポストモダンの条件』(1979)において提唱した言葉であり、科学がみずからの依拠する規則を正当化する際に用いる「物語、語り口narrative」のことを意味する。上記のような含意から、同書のなかでは、同じ意味として「メタ(=上位)物語métarécit」という表現が使われることもある。

リオタールによれば、従来人々は科学の正当性を担保するために「大きな物語」としての哲学を必要としてきた。ここでいう「哲学」とは、真偽や善悪を問う際の「基礎づけ」を担う知の領域を指し示している。リオタールは、このような「大きな物語」に準拠していた時代を「モダン」、そしてそれに対する不信感が蔓延した時代を「ポストモダン」と呼んでいる。つまりポストモダンとは、この基礎づけとしての「哲学」が有効性を失った、言い換えれば「大きな物語」が終焉した時代だというのである。1980年代以降に「ポストモダン」という言葉が浸透するにつれて、「大きな物語の終焉」というキャッチフレーズは、それ以前の時代からの断絶を強調するための格好の用語として広く人口に膾炙した。しかし上記のように、そもそもこの言葉を広く知らしめた『ポストモダンの条件』において、「大きな物語」という言葉が科学の正当化をめぐる議論において用いられていたという事実は記憶にとどめておく必要がある。

著者: 星野太

参考文献

  • 『ポスト・モダンの条件──知・社会・言語ゲーム』, ジャン=フランソワ・リオタール(小林康夫訳), 書肆風の薔薇, 1986

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