2017年12月15日号
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『日本・現代・美術』椹木野衣

Nihon, Gendai, Bijutu, Noi Sawaragi

1998年に刊行された、美術評論家の椹木野衣の主著。日本の戦後美術の歴史を時系列に沿って記述するのではなく、現在の視点から過去に向けて遡行することによって逆説的にその全体像をとらえた。その中心的な概念である「悪い場所」とともに、90年代後半以後の現代アートの批評的なトピックとなっている。椹木によれば、日本の戦後美術は、絶えず同じ問題が反復的に立ち現われるがゆえに、その歴史を「通史」としてまとめることが難しい。この閉ざされた円環の非歴史性を、椹木は「悪い場所」と呼んだ。戦後日本の経済成長と平和は、第二次世界大戦の敗戦以後、冷戦構造に組み込まれた反面、世界史から隔絶されたことに由来しているが、戦後美術もこの暴力と無縁ではない。にもかかわらず、これを忘却することによって戦後美術は成立したと椹木はいう。椹木の主張は、閉ざされた円環の彼方を新たな暴力によって押し開くのではなく、その存在を認識し、それに規定された生存様式を受け入れることにある。

著者: 福住廉

参考文献

  • 『日本・現代・美術』, 椹木野衣, 新潮社, 1998
  • 「日本ゼロ年」展図録, 椹木野衣ほか編, 水戸芸術館現代美術センター, 1999
  • 『美術手帖』2001年2月号, 「原宿フラット」, 浅田彰、岡崎乾二郎、椹木野衣、村上隆, 美術出版社
  • 『美術手帖』1973年8月号, 「閉じられた円環の彼方は」, 彦坂尚嘉, 美術出版社
  • 『日本のダダ1920-1970』(新版), 「円環の彼方へ」, 白川昌生, 水声社, 2005

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