2018年08月01日号
次回9月3日更新予定

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グラフィティ

Graffiti

デザインされた自分の名前を、主にスプレー塗料やマーカーを用いてストリートにかくという行為、およびその文化形態の総称。語源はイタリア語の「graffito(引っかき傷)」と言われるが、いわゆる「落書き(scribble)」と区別するためにしばしば「モダングラフィティ」とも形容される。かかれるのはタグネームというグラフィティ専用の名前であり、自ら考案するかコミュニティ内の先輩格の人物から与えられる場合が多い。また、グラフィティの実践者をグラフィティ・ライター(graffiti writer)という。1960年代後半のフィラデルフィアに現われたコーンブレッド(Cornbread)を最初のグラフィティとする説があるが、その起源を見定めることはむずかしい。いずれにせよ、サブカルチャーとしてのグラフィティが最初に発展したのは70年代のニューヨークであり、71年にニューヨーク・タイムズ紙に載ったタキ183(Taki 183)というグラフィティ・ライターの記事は、最初期にグラフィティがマスメディアに取り上げられた事例として知られている。80年代に入ると『ワイルド・スタイル』(1983)や『スタイル・ウォーズ』(1983)などのグラフィティを主題にしたヒップホップ映画の公開により、全米はもちろんのこと、ヨーロッパや日本にも伝搬し、90年代から2000年代にかけてほぼ全世界の先進国に定着している。このようなグローバルな広がりは、世界各地の風土と結びつくことで、その土地に固有なグラフィティ文化の発展をローカルに押し進めるとともに、移動しながらあらゆるところに自らの名前をかき残していくというグラフィティのミッションは、そのような複数のローカリティがまた、グラフィティ・ライターたち自身のモビリティによって伝搬され、混ぜ合わされ、ハイブリッドになっていくという世界同時多発的な現象と並行してもいる。90-2000年代にかけては、インターネットもそのようなグローバル/ローカルの二重性を効果的に支えている。他方で、グラフィティは基本的に違法行為であるため、そのグローバルな普及にもかかわらずつねにアンダーグラウンドな性質をもっている。また、勃興期から20-30年のあいだに独自の複雑な視覚言語がコミュニティ内で形成されたため、グラフィティのリテラシーに精通していないと認識がきわめて難しい。その基本的な表現様式としては、短い時間で一筆書きのようにかかれるタギング(tagging)、主に中塗りとアウトラインの二色でかかれるスローアップ(throw up)、時間をかけてかかれデザイン的にも完成度の高いマスターピース(master piece)の3段階がひとまず挙げられよう。

参考文献

  • Subway Art, , Henry Chalfant and Martha Cooper, Thames & Hudson, 1984
  • Spraycan Art: Street Graphics/Street Art, , Henry Chalfant and James Prigoff, Thames & Hudson, 1987
  • 『ニューヨーク・グラフィティ』, , 能勢理子, グラフィック社, 2000
  • 『現代思想』2003年10月号, 特集=グラフィティ マルチチュードの表現, M・ウォルシュほか, 青土社,
  • 『路上のエスノグラフィ ちんどん屋からグラフィティまで』, , 南後由和、飯田豊ほか(吉見俊哉、北田暁大編), せりか書房, 2007
  • アゲインスト・リテラシー ─グラフィティ文化論, , 大山エンリコイサム, LIXIL出版, 2015

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