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ジェントリフィケーション

Gentrification

都市において、比較的低所得者層の居住地域が再開発や文化的活動などによって活性化し、結果、地価が高騰すること。地域の経済活動の転換や停滞した地区の改善運動を契機として、それまで疲弊していた都心近接低開発・低所得地域(インナーシティ)に上流サラリーマンや若手芸術家など、都市の活性化を引き起こすキーパーソン(=ジェントリファイヤー)が移り住むことで、自然治癒的に地域環境が向上する。典型的な事例として、ニューヨーク市が挙げられる。1950年代、工場や倉庫の廃屋が並び立つSoHo地区に安価な居住を求めて芸術家やミュージシャンが移り住み、カウンターカルチャーの中心地となった。それによって地域に文化的、社会的な高級化がもたらされ、求心性を獲得した地区には中産階級が流入する。さらに彼らを対象にした商業施設が増加し、結果、住区では低所得者層から中・高所得者層へと居住者の階層の入れ替えが起こった。こうした地域の高級化は、持続的なインフラの整備や治安の向上などの恩恵をもたらすため、都市の不動産から投機的な利益を得ようとする人々や、都心部に中・高所得者住民を定住させ、雇用機会を確保しようとする行政側に歓迎される。また、57年に設立したイギリスの市民活動基金「シビック・トラスト」のように、特定の団体が主導して戦略的に芸術・文化を利用したジェントリフィケーションを行なう場合もある。ジェントリフィケーションは肯定的に評価されることがある一方で、高級化に伴う地価の上昇が廉価な住宅の消滅や継続的な所有が困難となった不動産の管理放棄などを引き起こし、もとの住人が転出を余儀なくされるという問題も顕在化している。インナーシティにおける居住者層の入れ替えは、貧困問題の本質的な解決には至らない。低所得者層が玉突き式に居住地域を移動しているにすぎないからだ。

著者: 江川拓未

参考文献

  • 『20世紀建築研究』, 20世紀建築研究編集委員会, INAX出版, 1998
  • 『都市経済と地域政策』, 金倉忠之, 東京市政調査会, 1994

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