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フィールド・レコーディング

Field Recording

広義には、スタジオやステージなど通常の録音環境の外部での録音を指す。こうした録音は、例えば、民族音楽学や生物音響学の調査、演説の記録、映画のサウンドトラックやラジオドラマ、音楽に雰囲気を添える効果音などに活用されていたが、次第にひとつの芸術形式として確立されていった。この芸術形式としての狭義のフィールド・レコーディングは、近年、「フォトグラフィー」と対比して「フォノグラフィー」とも呼ばれる。録音技術は誕生から現在まで、主に言語や音楽の記録のために使用されている。しかし、録音装置の発明当初から、エキゾチックな環境音や自然音の記録もまた、単独でまたは映像や音楽に添えられて、広く楽しまれてきた。よく知られたものでは、映像作家のW・ルットマンが1930年に楽音や会話にリズミカルな物音をコラージュしたラジオ作品《週末》を発表した。48年にはP・シェフェールがミュジック・コンクレート作品を発表し、楽音でも言語でもない音を使用した芸術形式を確立していく。40-50年代は英国録音協会やフォークウェイズ・レコードなどによるフィールド・レコーディングの収集が本格化し、T・シュヴァルツらが都市や乗物、ペットなどを対象とした録音を残した。動物学者R・ペインが70年に発表したレコード《セミクジラの歌》は100万枚の売り上げを記録する。同年、I・タイベルは自然音のレコードシリーズ《エンバイラメンツ》の発売を開始した。73年に《バンクーバー・サウンドスケープ》を発表したサウンドスケープ概念の提唱者R・M・シェーファーらは、音環境と人間の関係に注目し、ミュジック・コンクレートとは異なる理論をフィールド・レコーディングに与えた。またこの時期より、安価なテープ・レコーダーの登場をきっかけとして、環境音や自然音の録音や、その編集を通じた創作が広く一般に拡大した。そして、デジタル機材が普及した現在では、超高精細の無編集録音から原音を留めないほど加工された架空のサウンドスケープまで、ヴァラエティに富んだ作品が発表されている。

著者: 金子智太郎

参考文献

  • 『レコードの美学』, 細川周平, 勁草書房, 1990
  • Traité des objets musicaux: Essai interdisciplines, Pierre Schaeffer, Seuil, 1966
  • 『世界の調律 サウンドスケープとはなにか』, R・マリー・シェーファー(鳥越けい子ほか訳), 平凡社ライブラリー, 2006
  • Aural History: Essays on Recorded Sound, Andy Linehan ed., British Library Board, 2002

参考資料

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