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フレーム

Frame

狭義には絵画の額縁を指すが、現在ではそのような物理的な枠に加え、画面内の空間と外部の現実空間を隔てる非物質的な境界という意味も内包している。初期ルネサンスの建築家レオン・バッティスタ・アルベルティの『絵画論』(1435)では、画家は絵画を「開いた窓」に見立てており、遠近法を用いて描かれた絵画は、額縁がもつ「窓」の性質によって再現性が担保されていた。しかし、そのような視覚的再現=表象性は、近現代以降の絵画において批判の対象となり、境界領域としてのフレームがもつ作用についても俎上に載せられた。例えばクレメント・グリーンバーグは論文「モダニズムの絵画」(1965)において、それら絵画を長年支配してきたリアリズムやイリュージョニズムが、メディウムの本質を隠蔽してきたとして、還元不可能な絵画の本質を平面性に見出した。フランク・ステラのシェイプド・キャンヴァスは、矩形の形態から逸脱していながらも、それら60年代に制作されたシリーズにおいて描かれたモチーフがキャンヴァスの輪郭線と一致していることから、グリーンバーグによるフォーマリズムの影響がうかがえるだろう。さらにロザリンド・クラウスは、オディロン・ルドンら象徴主義の画家が画面内に描いた窓の形態から、20世紀以降の絵画がもつ幾何学的構造としての「グリッド」の概念を抽出した。グリッドは求心的/遠心的性質をもち、特に遠心的性質は作品の内側から外側へと作用し、「フレームを越えた一つの世界の認識」を鑑賞者に強いるものとされる。そのようなグリッドがもつ連続性は、絵画における知覚の問題に留まらず、アンディ・ウォーホルらの写真を用いた作品や、ルイーズ・ネヴェルソンの建築空間に関連が見られる立体作品まで拡張可能な概念として、展開された。
なお、ジャック・デリダは「彫像の衣服」や建造物の「列柱」とともに、絵画の額縁に「パレルゴン」を見出している。パレルゴンとは、作品に対して本質的でも付随的でもない「作品-外的補足物」であり、デリダはそのようなパレルゴンとしての額縁の境界領域を問うことで、絵画あるいは作品を論じた。

著者: 森啓輔

参考文献

  • 『グリーンバーグ批評選集』, クレメント・グリーンバーグ(藤枝晃雄編訳), 勁草書房, 2005
  • 『オリジナリティと反復 ロザリンド・クラウス美術評論集』, ロザリンド・E・クラウス(小西信之訳), リブロポート, 1994
  • 『絵画における真理 上』, ジャック・デリダ(高橋允昭、阿部宏慈訳), 法政大学出版局, 1997

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