2019年01月15日号
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御真影(御写真)

Goshinei(Imperial Portraits)

明治から太平洋戦争終戦までの天皇の肖像写真(あるいは高貴な人物の肖像)を指す言葉。1872年、写真師の内田九一がはじめて明治天皇の写真を公式に撮影し、翌年には断髪した洋装軍服姿の明治天皇の全身像をあらためて撮影している。このときの洋装の天皇の写真は国内では文明開化のシンボルとして広く流通し、対外的には国家間の友好の印として交換された。73年に奈良県令が天皇の写真の下賜を申請し許可されたのを皮切りに、地方官庁や軍隊、学校などにも順次下賜されていく。88年に制作された御真影はお雇い外国人のエドワルド・キョッソーネが描いた明治天皇の肖像画を丸木利陽が複写したもので、これは明治天皇が写真嫌いであったための苦肉の策であったと言われている。絵画と写真の接合物となった半身像の明治天皇像は、堂々たる近代君主像として多くの人々に仰ぎ見られた。御真影にまつわるさまざまな儀礼の過程で、次第に写真が天皇と同一視されるようになり、校舎の火災の際に御真影を守ろうとした学校長が命を落とすという事件も頻発した。こうした事件の影響もあり、1920年代になると盗難や火災防止として奉安殿と呼ばれる専用の施設に保管され、祝祭日には礼拝と教育勅語の奉読が行なわれるようになった。敗戦の翌年には御真影を「奉焼」すべしという通達が出され、奉安殿も一部を除いて撤去された。

著者: 小原真史

参考文献

  • 『天皇の肖像』, 多木浩二, 岩波新書, 1988
  • 『可視化された帝国 近代日本の行幸啓』, 原武史, みすず書房, 2001
  • 『ミカドの肖像』, 猪瀬直樹, 小学館, 1986

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