会期:2026/05/26~2026/07/04
会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー[東京都]
公式サイト:https://www.dnpfcp.jp/CGI/gallery/schedule/detail.cgi?l=1&t=1&seq=00000855
TikTokやInstagramのリール動画などに代表されるように、近年、我々はSNSを通じて数秒〜数十秒のショート動画に触れる機会が増えている。前世紀まで映像といえば、ある程度の長さをもったものという概念しかなく、静止メディア(絵、写真、グラフィックなど)と映像メディア(テレビ、映画、ビデオなど)の二者は明確に分かれていた。ところが、その中間的な領域に位置するショート動画がいまやすっかり定着したのである。映像デザイナー/クリエイティブディレクターとして活躍する井口皓太(いぐち・こうた)の作品は、そうした時流に乗って必然的に生まれたものではないかと強く感じた。もちろん一般人がSNSで発信するショート動画と、井口が手掛けるモーショングラフィックスや3Dアニメーション、3D屋外広告などは比べるべくもなく創造性や完成度の高さが違う。しかし、それらを受容できる土台があるという点では同じである。我々はまるで生物でも眺めるかのように、動きのあるものに目がスッと引き寄せられる習性があるようだ。

展示風景 ギンザ・グラフィック・ギャラリー[撮影:藤塚光政]
本展では3組のデザイナーをコラボレーションゲストに迎え、「幾何図形×規則性」「文字×身体性」「紙×連続性」の三つをテーマとした、新作も含めた作品を発表していた。同じ要素を扱いながら、平面と立体、グラフィックとモーショングラフィックといった2Dから3Dへと行き来する作品構成は面白く、またそれらを通して彼らの思考の軌跡も垣間見えるようで、なかなか新鮮であった。デジタルを主体としていながら、アナログの紙を使った立体作品があったのも好感がもてる点だった。
これらの作品を一覧すると、結局、井口が試みているのはグラフィックの延長としてのモーショングラフィックスや3Dアニメーション、3D屋外広告なのではないかと思えてくる。つまり原点は静止メディアにあり、その発展形としての動きのデザインなのではないか。なぜなら従来型の映像メディアのように、数十秒の動きの中に何かストーリーが存在するわけではないからだ。中にはストーリーの切り取りはあるかもしれないが、あくまで断片的でしかなく、その間を埋める作業は受け手側の想像に大きく委ねられる。代わりに大きく占めるのがメッセージである。数十秒とはいえ動きが伴うと、グラフィックよりも鮮烈にそのメッセージを訴えかけることができる。おそらく井口はこの効果を熟知しており、その点においてまさに時代の寵児といわざるを得ないのである。

展示風景 ギンザ・グラフィック・ギャラリー[撮影:藤塚光政]
鑑賞日:2026/05/26(火)