
会期:2026/07/17~
会場:ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺ほか全国公開
公式サイト:https://mimosafilms.com/thegreatarch/
本作は、建築家のみならず、きっと多くのクリエイターが主人公の目線に立ち、胸がギュッと締め付けられる思いをするに違いない。いわば、「あるある」なシチュエーションなのである。建築家の伊東豊雄が本作に向けて以下のコメントを寄せていることからも、それは物語られている。「国家が関わる巨大プロジェクトに政治は付き物である。芸術作品に固執する建築家の純粋な意志は踏みにじられ、やがて重大な決断を迫られることになる。映画ではそのプロセスがドラマティックに描かれる」。まさに、そのとおりなのだ。
時は1980年代、ミッテラン大統領下のフランス。これまでの保守的な政治から一変し、勢いづいた大統領はパリに大きなモニュメントの建設を推進する。それが後に通称「新凱旋門」と呼ばれる「グランダルシュ」だ。国際コンペティションによって大統領の心を射止めたのが、キューブ形のアーチ状の建物だった。それを提案したのは、デンマーク人建築家のヨハン・オットー・フォン・スプレッケルセン。当時も、たぶん現代においても無名の建築家であり、しかも大規模プロジェクトの経験がなく、外国人である。純粋に作品の芸術性に惚れ込んで選んだ大統領には「英断」という名誉が与えられるが、現場にとってはそんなに甘い話ではない。いや、むしろ苦難と波乱続きだったのである。

©2025 AGAT FILMS, LE PACTE
建築家のスプレッケルセンは、自分の作品に対する理想をいっさい曲げない完璧主義者として登場するのだが、現実問題としてそれは予算や工期に大きく関わってくるため、どこかで折り合いを付けなければならない。その闘いが本作の中心的テーマである。プロジェクトの統括を担う役人や補佐役の建築家らと何度も喧嘩をし、呆れられ、なだめられる様子が非常にスリリングかつドラマティックに描かれる一方、あまりに純粋過ぎるスプレッケルセンが切なく思えてくるのだ。しかもプロジェクトの途中で政権が変わり、その結果、予算が大幅に削られるという悲劇まで訪れる……。

©2025 AGAT FILMS, LE PACTE
建築に限らず、一般的にクライアント仕事において、クリエイターが理想を押し通すことは決して容易なことではない。ましてや、国家プロジェクトともなれば、である。その際に迫られるのが現実との折り合いの付け方で、それは妥協とも捉えられるし、ドライな現実主義ともいえる。この処世術に長けた人が、きっと世間でもてはやされるクリエイターになれるのだろう。

©2025 AGAT FILMS, LE PACTE
鑑賞日:2026/05/26(火)
『新凱旋門物語』
2025年/フランス、デンマーク/106分/カラー/1.37:1/5.1ch/フランス語、英語、デンマーク語、イタリア語
原題:L‘Inconnu de la Grande Arche/英題:THE GREAT ARCH
脚本:ステファン・ドゥムースティエ
出演:クレス・バング、スワン・アルロー、グザヴィエ・ドラン、ミシェル・フォー、シセ・バベット・クヌッセン
原作:ロランス・コセ著・北代美和子『新凱旋門物語 ラ・グランダルシュ』(草思社)
字幕:齋藤敦子
後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ、デンマーク王国大使館
協力:ユニフランス
配給・宣伝:ミモザフィルムズ