会期:2026/05/15〜2026/05/24
会場:東京芸術劇場シアターイースト[東京都]
作・演出:三浦直之
公式サイト:http://loloweb.jp/

ロロが新作『ウルトラソウルメイト』(作・演出:三浦直之)で新たな一歩を示してみせた。親しい間柄でも共有されない出来事があること、その寂しさとそれでも続いていく関係を描いた『飽きてから』(2024)。自分が誰かに抱く好意や思い出がその相手のそれとは決して同じにはならないことの苦さを描いた『まれな人』(2025)。ここ数年のロロ/三浦直之は、人と人とが関わるなかで否応なく生まれてきてしまう寂しさや苦い感情を会話劇の形式で描いてきた。ではそこに、初期ロロのファンタジックな想像力が流れ込んだなら? 物語は二人の少年──苺辺祝祭(亀島一徳)と立町リリイ(篠崎大悟)が出会い、それぞれに成長し、やがて大人になるまでを描いていく。

[撮影:石神俊大]

はじまりは1998年。二人が小学4年生だった頃。おじさんの葬式で「東北地方の海沿いの町」に来ていた祝祭は、「トキワの森」でリリイと、そしてその「師匠」の時計台(大場みなみ)と出会う。どうやら時計台は二人にしか見えていないらしい。4年後、両親の離婚で転校してきた祝祭はリリイ・時計台と再会し、多くの時間を共有することになるのだが、やがてサッカーのために千葉の高校に進学するリリイとは再び離れ離れに。三人は手紙で近況を報告し合うものの、部活で思うように活躍できないリリイの手紙には嘘が増えていく。そうして積み重ねた嘘の気まずさからか、いつしかリリイは祝祭と連絡すら取らなくなり、時計台の姿も見えなくなってしまうのだった。そして時は流れる。いまやサッカーをやめ、ケーキ屋で働くリリイは、猫パフェ(荒木知佳)との結婚式に呼ぶために祝祭に久しぶりに電話をかける。だがすでに祝祭は亡くなっていて──。

[撮影:石神俊大]

[撮影:石神俊大]

時計台の教えによれば「星と星とのあいだをパスで結んでいく」「サッカーって星座のこと」だという。人と人との関わりもまた星座のようなものだ。人それぞれの人生は途切れることのない連続性のなかにあるが、誰かとの関係は、関わり合うその限られた時間の一つひとつを点としてつないでいくようにしか描いていくことができない。つながっているように思える点と点とのあいだにあるのは不在なのだ。そこを埋めるのは想像でしかなく、だからこそそれぞれが異なる絵を描いていたりもする。

そしてまた、いつも次の点が存在している保証もないのだ。その意味で、『ウルトラソウルメイト』は取り返しのつかない過去をめぐる物語であり、それらをどう引き受けて現在を生きるのかという物語でもある。「取り返しのつかない過去」というのは例えば、リリイが気づけば祝祭と連絡を取らなくなってしまっていたことや、あるいは作中でも言及される東日本大震災を指すものでもあるのだが、それだけではない。あらゆる過去は取り返しがつかないからだ。

[撮影:石神俊大]

しかしだからこそそれはときに呪いへと転じてしまう。中学時代の祝祭・リリイ・時計台がオシム監督(新名基浩)率いるジェフ・ユナイテッドの試合を観るためのヒッチハイクで出会った麦野(荒木)と歯茎(門田宗大)は、祝祭・リリイ・時計台が辿ることになる未来の、ネガティブな可能性のようにして現われる。麦野・歯茎は、「昔はしょっちゅう三人でつるんでたはずなのに」「二人ともずっと忘れて」いて「もう何年も会ってなかった」昔の知り合いに会いに行くところなのだという。しかし、改めて当時のことを思い出してみれば、それは思っていたのと違うかたちをしているかもしれない。そのとき、過去は「石の怪物」として姿を現わす。だが、それもまた誰かの描く「星座」なのだ。ならば怪物と対峙する二人もまた、あるいは二人こそが怪物なのだろう。

[撮影:石神俊大]

取り返しのつかない過去は個人のそれに限ったものでもない。米軍から返還された飛行場の跡地に建てられたスタジアムや風船爆弾の打ち上げ基地跡、そして福島第一原発事故による「帰宅困難地域」。過去の、歴史の記憶はその土地土地に残され、猫パフェはそういう場所に現われる石の怪物を探して退治しているのだという。あるいは、ストイコビッチやオシムを通して言及されるユーゴスラビア。いまこことは隔たった場所とのつながりを、どのようにしていまここで引き受けるのか。あるいは、いまここにたしかにいるにもかかわらずいないことにされてしまう時計台のような存在を、どうすれば見過ごさずにいられるのか。

星座を描くパスは次の世代にもつながれていく。かつて祝祭とリリイが遊んだ「トキワの森」では、いまは春めく(野口詩央)が時計台との時間を過ごしている。リリイはそこで自分の知らない祝祭の痕跡と改めて出会い直しもするだろう。

[撮影:石神俊大]

ロロの次回公演は未定だが、2027年4月にはCoRich舞台芸術!プロデュース【名作リメイク】の第3弾として野田秀樹の『贋作 罪と罰』の演出を担当することが発表されている。こちらは出演者のオーディションも開催されるとのことで、三浦の新たな挑戦を楽しみに待ちたい。

観賞日:2026/05/18(月)