会期:2026/07/02~2026/09/21
会場:東京都写真美術館 3F展示室[東京都]
公式サイト:https://topmuseum.jp/exhibition/5419/

「食」をテーマにした展覧会はこれまでもあるにはあったが、裾野の広いテーマである分、どこへ焦点を定めるのかが実は難しい面もある。例えば食と健康なのか、環境なのか、家族団らんなのか、あるいは思い出なのか……。その点で本展もさまざまな面を扱った内容であったものの、写真・映像作品を用いた展覧会という切り口にはある程度の独自性があった。何より写真や映像は比較的リアルを伝えられる媒体であるため、大変興味深く鑑賞できたのである。


川内倫子「Cui Cui」より 2005年 シングルチャンネル・ビデオ(223点のスライド) 作家蔵

第1室「あのとき、あの食卓で」では、日常における「食」の風景を情緒的に伝えており、第2室「食と地域のあいだに」では、食と土地との結び付きをジャーナリズム的に伝えていた。特に第2室での米国統治下の沖縄の人々の暮らしを切り取った写真には目を奪われた。いわゆる米兵や基地といった側面ではない、当時の沖縄らしい風土を知ることができたからだ。そして写真や映像は、土地の歴史を知る上でも重要な手がかりとなる。知られているとおり、東京都写真美術館のある恵比寿ガーデンプレイスが建つ前、ここはサッポロビール恵比寿工場だった。同工場が粛々と解体されていく様子が「建築の黙示録」と題された作品シリーズに収められており、それらを同館で眺めることの不思議さを感じたのである。


山田實《手をつないで 糸満漁港》 1960年 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵


宮崎学《捨てられたスイカの山に群れるイノシシの家族》「アニマル黙示録 イマドキの野生動物」より 1993–2012年 インクジェット・プリント 東京都写真美術館蔵

一方、第3室「環境のなかで」も迫力のある写真が出そろっていた。ネズミやハクビシン、イノシシ、クマなど、人間の生活圏に時折出没する野生動物に、我々は驚かされる日々であるが、そもそもこうした事態を招いたのは人間自身の営みである。まさに「人新世」というべき、人間社会と野生動物との食をめぐる共存がリアルに写し出されており、圧倒されるばかりだった。最後の第4室「明日の食卓」では、高齢化や一人暮らしの増加により取り沙汰されている、孤食について考えさせられる映像作品が映し出されていた。孤食は、私自身にとっても他人事ではない。もはやそれが寂しいと思う意識すらないのだが、たまに誰かと会食する時間は確かに楽しい。しかし中には孤食が本当に好きな人もいれば、会食する相手や状況によって、それが苦痛の時間になることもある。したがって孤食と会食を日常、非日常として使い分けながら、それぞれのライフスタイルに基づいて心の豊かさが得られればいいのではと思う。このように「食」は生きることに直接つながるため、あれこれと思案するきっかけを与えてくれるテーマなのである。


折元立身《500人のポルトガルのおばあさんのランチ(記録映像):サンベント・デ・カストリス修道院(ポルトガル、エヴォラ)》 2014年 シングルチャンネル・ビデオ 個人蔵 ©ART MAMA FOUNDATION

鑑賞日:2026/08/18(火)