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10th Anniversary News Release
ハマトリニュース02/桃谷恵理子|キム・スージャ
速報!「横浜トリエンナ-レ2005」
ハマトリレポート
キム・スージャ インタビュー
「これからの国際展は『アイディア』と『アイデンティティ』が必要」
聞き手:村田真

今年のヴェネツィア・ビエンナーレをはじめ、これまでにも数々の国際展で作品を発表してきたキム・スージャ。会場の下見を終えた翌日、今回の作品の構想ともに、近年の国際展のあり方について語ってもらった。


キム・スージャ
キム・スージャ
──横浜には行きましたか?

KS:昨日、2〜3時間だけ行きました。

──どんな印象をもちましたか?

KS:とても美しいと思いましたよ。ああいう場所に関わるのが楽しみです。それと、東京に近く、とても重要な輸出入に関係するところなのでエネルギーを感じました。

──そこでなにをやるか、決めました?

KS:はい。《アルバム》というタイトルの新作ビデオをつくってます。顔を映すだけなのですが、少しずつ表情が変わっていくんです。自分の内にあるものを映し出すわけですね。ビル・ヴィオラの映像と比べると、彼はプロの俳優を使うけど、私の場合そういうトレーニングをしたことのない人たちばかりです。私自身も監督としてこういうふうにしてほしいと指示するのでなく、彼ら自身がどう感じたかを映し出したいのです。そのために編集もいっさいしません。

──その作品のアイディアは前からあったのですか?

KS:ずっと考えていたんですが、実際につくりはじめたのは去年からで、いままで見せたこともありません。トリエンナーレが初公開になります。これからずっと続けていきたいプロジェクトです。

──最近はインスタレーションよりビデオ作品が多いようですが。

KS:私にとってインスタレーションとビデオは同じというか、少し変化したかたちだと思います。いわゆるイメージメーキング、つまり映像をつくりたいというのではなく、スクリーンというものをこれまで考えてきた構想を映し出す場にしたいのです。私のビデオは、たとえば布を車に積み込むインスタレーションと同じようなイメージでつくってます。《ボディ・ニードル》というビデオがあるんですが、それは自分の身体が針になって、人の流れという布のなかを縫っていくものです。インスタレーションとビデオは私のなかではかけ離れたものではありません。

──最初から新作ビデオを出そうと考えてました? それとも会場を見てから決めようと?

KS:まさに昨日、実際に場所を見て決めました(笑)。

──ディレクターの川俣さんは映像よりインスタレーションを増やしたかったようですが、川俣さんからリクエストは?

KS:「スージャ、ぜひ大きなインスタレーションをつくってくれ」と(笑)。そしたら小さなビデオ作品になってしまった(笑)。

──ところで、アーティストが国際展のディレクターをやることはどう思います?

KS:とてもいいことだと思います。キュレーターがディレクターを務めるよりも、もっと違う視点をもつことができると思う。美に対する意識とか、どのように作品をつくっていくかとか、そういう問題はアーティストと共有できるはずです。川俣さんは彼自身のプロジェクトとしてトリエンナーレを進めているんじゃないかしら。それでなおかつひとりひとりのアーティストを大切にあつかっている。ただ運営面に関しては彼もこれほど大規模なことははじめてでしょうから、とてもチャレンジャブルなことだと思う。
川俣さんはこのトリエンナーレのために自分のアイデンティティを変える努力をしているんじゃないでしょうか。アーティストとしてのアイデンティティからディレクターとしてのアイデンティティへと、突き進んでいるように見えます。

──アーティストがディレクターをやると、アーティストの気持ちはわかってくれる反面、やりにくいこともあるんじゃないですか?

KS:いいえ、同僚と一緒に仕事をしているようでとても楽しいですよ。まったく話が通じない上司だと困るけど(笑)。

──テーマの「アートサーカス」についてどう思います?

KS:あっちこっちのビエンナーレやトリエンナーレに参加してみて、たしかに国際展が「サーカス」みたいな状況になっているのはわかります。ただそれでいいのかと問題にしなくてはいけないし、見る側もどうすればいいのか、一緒に考えていく時期だと思います。

──横浜トリエンナーレがほかの国際展と違うとしたら、どういう点でしょう?

KS:これまで各地のビエンナーレに行って、その場所その場所によってそれぞれ違いますよね。最近は国際展ごとに異なるアイディアとアイデンティティを出そうという傾向が強くなっています。残念ながら前回の横浜トリエンナーレは見ていないのでなんともいえませんが、アイディアとアイデンティティをきちんとつくっていけば、これからも発展していくでしょうね。そのへんをちゃんと考えて取り組んでいくことが大切だと思います。
(8月2日、東京・ホテルニューオータニにて)
キム・スージャ(Kim Sooja)
1957年、韓国大邱(テグ)生まれ。ニューヨーク在住。韓国の伝統的な織物を使った色鮮やかなインスタレーションで知られる。近年はビデオ作品にも力を入れている。ヴェネツィア・ビエンナーレ(99、01、05)をはじめ、サンパウロ、シドニー、釜山、光州などのビエンナーレや、帯広の「デメーテル」展などに参加。http://kimsooja.com/
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