あるミュージアムに特定の作品があることがわかっているのに、その画像をネット上で見ることができないとしたら、
- 予算、スケジュールなどの理由でデジタル画像化されていない
- デジタル画像化されているが著作権の関係で許可が得られず見せられない
- デジタル画像化されているが見せると来館者が減るなどその他の理由で見せない
のどれかだろう。
ネット上に多くの画像を公開しているデジタルアーカイブで、ところどころ作品名の傍らに「画像なし」の表示があったりする場合は、予算、スケジュール、著作権の問題がクリアされれば、いずれ公開されるだろうという期待を抱かせる。
これらのなかで著作権が存在する場合、つまり我が国では作者の死後50年たっていない場合、複製権の問題が生じる。すなわちネット上で公開すると不特定多数の人たちに無断で複製されてしまいそれを追及し対価を請求することも容易でないということがある。そうなると画像の公開が著作権をもつ本人や遺族などから許可されなかったり、許可されても実害の少ないサムネイルにとどまったりすることが多い。
一般論としては公開に関する選択は著作権に関する判断と行使であり、どうあるべきかをここで論ずることはしない。
しかしながら著作権が存在するにもかかわらず多くの画像を公開しているケースはあり、それを以下に挙げてみる。同種のものが増加するきっかけになればと考える。
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東郷青児について
損保ジャパン東郷青児美術館ホームページより |
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まず丸亀市猪熊弦一郎現代美術館（香川県）のホームページをみてみよう。
ここでは猪熊弦一郎（1902-1993）の作品約150点を葉書大（ノートPCの場合）で見ることができる。惜しむらくは画家のプロフィールが簡単すぎ、それと作品とが結びついていないことであろうか。この百景で前回述べたことがここにも当てはまる。とはいえ、没後10年くらいでここまで見ることができるのは幸せというべきだろう。
これと同じく損保ジャパン東郷青児美術館（東京都）では、その名を冠している東郷青児（1897-1978）の作品50点を鑑賞に充分な大きさで見ることができる。
画質も鮮明である。個々の作品に解説がついていればという感はあるのだが。
画家の名前を冠している館ばかりではない。山口県立美術館では、多くの自治体と同様に地元ゆかりの作家コレクションに力を入れてきた。なかでも香月泰男（1911-1974）の作品約150点が充分な拡大機能付で公開されているのは感動的だ。解説の内容と長さも適切である。有名な「シベリアシリーズ」のほぼ全作品がここに寄贈されているということもあるのかもしれないが、寄贈されたからといって必ずその画像をまとめて見ることができるとはかぎらない。今後香月の作品がさらによく知られ理解されるきっかけになるだろう（現在メ ンテナンス中）。
またこの美術館では、現役の写真家である荒木経惟、森山大道の作品が相当数公開されている。これもあまりないことである。
このほか、画家によっては限定された作品が個別に公開されているケースもある。奈良県立美術館では、現役画家・絹谷幸二の作品、新潟県立万代島美術館では、名品集レベルの数量ではあるが、県ゆかりの横山操、現役画家の野見山暁治、森村泰昌、福田美蘭などの作品を公開している。
これらの事例では一般的に洋画が多いが、使用している絵の具の性質から常設展示が難しい日本画のデジタルアーカイブこそ、その公開の意義は大きい。今後に期待したい。 |
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左：絹谷幸二《チェスキーニ氏の肖像》
奈良県立美術館ホームページより
右：収蔵作品紹介
新潟県立万代島美術館ホームページより |
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| また著作権とは無関係であるが、このところ国立国会図書館、国立公文書館などができるだけ資産公開を加速しようと前向きなサービスをしていることも目立つし、デジタルアーカイブが始まった当初に比べると寺社の資産公開も少なからず出てきた。こうやったほうがその機関・団体の評価、訪問者の増加に寄与するという見方が徐々にできつつあるとすればよろこばしいことである。 |
| 2006年4月 |
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| [ かさば はるお ] |
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