サイトで使える無料空撮写真
前々回、近未来のメディアを描き出したフラッシュ・ムービー「EPIC
2014」がバージョン・アップされ、「EPIC
2015」になったという話を書いた。このショート・ムービーの最後には、空から見おろした街の画像が現われ、そこを行き来する市民の情報発信によってニュースが伝えられている2015年のメディア状況が描かれていた。
こうしたことは、部分的にはすでに始まっている。相次いで二つの大きなハリケーンに見舞われたアメリカでは、ウェブ上の地図や航空写真に現地の様子を書きこんで、情報を共有するといったことが行なわれた。
これらの地図で使われているのは、グーグルの地図サービス「グーグル・マップ」だ(最近、地域情報サイト「グーグル・ローカル」と統合された)。ふつうの地図と、衛星写真もしくは航空写真、さらに地図と写真を組み合わせた「ハイブリッド」、3種類の画像が米グーグルのサイトでは表示できる(日本語の「グーグル・マップ」には「ハイブリッド」はまだないが、空撮写真は表示できる)。これまでのウェブ地図のように、移動するたびにクリックして表示されるのを待つのではなく、キーボードの「+」「−」を押すだけで拡大・縮小でき、矢印キーで移動できる。こうやって簡単に画面を操作して空からの写真を見ていると、飛行機に乗って街を見下ろしているような気分になってくる。
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地理データの共有と公開
グーグルは、API(Application Program Interface)を無料提供し、地図データを誰でも使えるようにしている。サイト運営者は、新たな情報をピンで留めるなど情報を加えながら、グーグルの地図を自分のサイトで使うことができる。
たとえば「ハウジング・マップ」というサイトでは、地図上にマッピングして不動産情報を提供している。また、混み具合や工事中などの道路状況を教えてくれるサイトもある。
これらはアメリカのサイトだが、グーグル・マップを使ったサービスを提供しているサイトの日本語リストも作られていて、このリストを見ると、日本語サイトもずいぶんできている。
アート系のものもすでにいくつかある。
「東京アートイベント地図」は各地の展覧会情報をマッピングしている。「東京アートビート」というサイトのデータをもとにしていて、すでに情報量も豊富だ。絵画とか彫刻などアートのジャンルを指定して表示できるだけでなく、「最も人気」とか「スタート間近」「入場無料」「ファミリーで」「もうすぐ終了」など、利用者の好みに応じてイベント情報が表示される。
「建築見蓄 地図検索」というサイトは、まだベータ版だが、世界各地の建築情報をマッピングしている。地図上のマーキングをクリックすると、写真や、設計者の名前、住所、ホームページへのリンク、参考文献など基本的な情報が現われる。この基本情報のページにある「衛星写真」というリンクをクリックすると、グーグル・マップの衛星写真が現われて、その建築物を上から見ることができる。「建築見蓄」は建築事務所がやっているサイトで、自分たちが行ったところの写真を撮って載せているようだ。
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トマソンのようなプロジェクトにうってつけ
アートを美術館のなかに閉じこめるのではなく、街と一体化させたいというのは、多くの美術関係者の夢だった。地理情報を共有できる「グーグル・マップ」を使えば、街なかで埋もれているアートを再発見することができるだろう。地図上の情報からほかのサイトへのリンクも張れるので、地元のアート・マップを作り、関連サイトや掲示板を作って、ファンを増やしていくことができる。
アートを美術館の建物のなかに据えるのをやめてしまい、初めから街なかにおき、「○○市美術マップ」をウェブ上に設置しただけの美術館、などというのもできるかもしれない。
赤瀬川原平氏は、街なかにある役に立たない奇妙な建築物を「超芸術トマソン」と名づけて探し回り、「路上観察学会」まで立ち上げた。トマソン・ファンはいまでも多く、「トマソン・リンク」、「トマソン・トーキョー」、「Yokohamaトマソン」、「トマソン大阪」など、いろいろサイトがある。こうしたプロジェクトも、「グーグル・マップ」向きだろう。 |
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[うただ あきひろ] |
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