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「コレクション・カフェ――スプーン一杯の想像力とともに」
札幌/
北海道立近代美術館
鎌田享
「コレクション・カフェ」会場風景
この数年、公立美術館が開催する展覧会のタイトルに「所蔵作品による」という言葉を多く見かけるようになりました。その主たる要因として、昨今の予算削減傾向があることは否めません。お金がない→他所から作品を借りてきての大規模展が開けない→所蔵作品を活用するしかない、というわけです。しかしそんな状況だからこそ、日ごろから見慣れ知り尽くしている(と思っている……)所蔵作品を、いかに新鮮な切り口で紹介していくのか、学芸員の手腕が問われています。
ただいま北海道立近代美術館では、「コレクション・カフェ――スプーン一杯の想像力とともに」という展覧会を常設展示室で開催しています。展示室を「ポップ・カフェ」「トリック・カフェ」「オーガニック・カフェ」「ヒーリング・カフェ」という4つのコーナーで構成。「トリック・カフェ」にはライリーやヴァザルリらによる錯視効果を取り込んだオップ・アート、「ヒーリング・カフェ」には深遠な印象を与える難波田龍起の抽象絵画、というように4つのキーワードと連関した作品を展示しています。近ごろ流行りの「カフェ」は、いってみればオーナーの趣向が十二分に反映された趣味的空間。この展覧会は、各コーナーをそんなこだわりのカフェ空間に見立てて、オーナー(美術館・学芸員)が思い入れたっぷりに選び抜いたメニュー(所蔵作品)を、ゲスト(来館者)に味わってもらおうという趣向なのです。
そしてこの展覧会のもうひとつの特色が、タイトルの後半「想像力とともに」という部分。それぞれの作品の脇には、来館者の想像力(そして創造力)を刺激しながら作品への興味と関心を喚起するような呼びかけのパネルが添えられています。例えば李禹煥の絵画《線より》の前では、その筆触のリズムに合わせて手を動かしてみるというように……。これらのパネル類に加えて、ファイーバー・アートのところでは来館者にも木綿糸をより合わせる体験をしてもらう、屏風の前では靴を脱ぎカーペットに座って同じ床の高さに飾られた作品を見てもらう、ポータブルCDプレイヤーから流れる音楽に耳を傾けながら絵画作品を鑑賞してもらう、などなどなど、ユニークなツールのかずかずも用意されています。
通常の展覧会に比べると来館者がアクションをおこすシーンの多いこの展覧会、ともすればおせっかいと受け取られかねません。しかしそうした印象を与えないのは、これらの仕掛けがあくまでも来館者の想像力を刺激するということに終始しており、それ以上の謎解きや解説までは踏み込んでいないから。担当学芸員のモットーは、「鑑賞者の創造性を引き出す作品展示」とのこと。懇切丁寧な解説文を読んで作品を「理解する」のとも、自分の知識と感性だけをよりどころに主観的に作品を「鑑賞する」のとも違った、イマジネーションを広げクリエイティヴィティを発揮する作品の味わい方が楽しめます。
作品と学芸員の関係は、よく素材と料理人に例えられます。素材(作品)に料理人(学芸員)が手を加えることで新たな味・魅力を引き出すことができます。しかし料理人のひとりよがりで手を加え過ぎると、いかにいい素材でもその味を壊してしまいます。よく知っているはずの素材・所蔵作品だからこそ、サービス過剰にもならず、つっけんどんにもならない、スプーン一杯の絶妙のさじ加減=紹介方法がもっと試みられてもいいのでは、と思ったりしています。
会期と内容
●「コレクション・カフェ――スプーン一杯の想像力とともに」
会場:
北海道立近代美術館
常設展示室
札幌市中央区北1条西17丁目 Tel.011-644-6881
会期:2004年12月10日(金)〜2005年4月10日(日)
開館時間:9:30〜17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜日
観覧料:一般450円、高大生220円
[かまた たかし]
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