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学芸員レポート
札幌/吉崎元章福島/木戸英行東京/増田玲|高松/毛利義嗣
「やなぎみわ 少女地獄極楽老女」展
高松/高松市歴史資料館 毛利義嗣
 2000年から継続している写真作品「My Grandmothers」、ビデオを用いた「Granddaughters」の2つのシリーズに、今回初出品の新作「寓話」シリーズを加えた、やなぎみわの個展です。
 「My Grandmothers」シリーズでは、作者と比較的世代の近い人たちとの共同作業によって「祖母」のそれぞれの理想像が探られ、「Granddaughters」では現実の祖母たちと少女たちによって「祖母」がより普遍的な記憶となる局面が示されていましたが、この「寓話」という写真のシリーズでは、世に知られた物語の一場面が舞台となり、その中で、老女と少女をめぐる作者の幻想的で奇怪なビジョンが思う存分に描かれているように思えます。
 「エレベーターガール」のシリーズも含めて、やなぎ作品ではこれまであまり表面に出てこなかった、というより抑制されていた、恐怖や痛み、悪意、肉体性、触知性、そういったものが荒々しく画面を覆っていて、しかし、モノクロームであること、あるいはあくまでもこれが「劇」であるように見せる舞台風の構成などによって、過度に生々しくはならず、世界のどこか手の届かない場所で延々と演じられている「少女地獄極楽老女」という出し物を、私たちが今ほんの少しだけ覗いているのだと、そんな気にさせられます。
 さて、「グレーテル」「白雪」「赤ずきん」といったよく知られた物語を題材に使ったこの「寓話」のシリーズの中に、「無題」と題する、特定のストーリーにはよらない作品が展示されていました。そこに写されているのは、(作者によれば)メキシコ風の、テントのような布を頭からすっぽり被って裸足で立つ人間らしきもの(こちらのイラスト参照)。手は老女で脚は少女、その脚は水溜りに少し映っています。土があり、草があり、背後に広芒とした風景が続いて、しかしその背景は所々剥がれていることからも、明らかな書き割りです。この狭い舞台空間であるところの巨大な世界の中に佇む人間ようなものの姿に、極北といえるような孤独の哀しみと楽しみを感じて、心震えました。。
 この展覧会は丸亀だけの開催ですので、どうぞお早めに。
会期と内容
「やなぎみわ 少女地獄極楽老女」展
会期:2004年7月25日(日)〜9月12日(日)
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
URL:http://web.infoweb.ne.jp/MIMOCA/
香川県丸亀市浜町 80−1
Tel. 0877−24−7755
Fax. 0877−24−7766
[もうり よしつぐ]
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