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中国現代美術レポート
大阪/
国立国際美術館
中井康之
上から
・ShanghART
・鳥頭スタジオ
・ジャン・ファン スタジオ
・「798」アートカフェ
・コレクター倉庫
・方力釣スタジオの庭
・「798」内に建設中の美術館
・グー・ダーシン
・孫原+彭禹
今 実は2─3月は、2─3年先の展覧会のための出張、美術誌連載物の取材、あるいはシンポジウムへの参加等が重なり、レポートができるような展覧会鑑賞ができなかったことを伝えなければならない。なかでも、およそ2年後に予定している中国現代美術展のための上海・北京調査は、ハードなスケジュールではあったが、展覧会を立ち上げるための基本的なコンセプトを組み立てるためには有意義な情報を得ることはできた。
3月6日、朝一番の上海便で、午後2時には上海の莫干山路50号芸術地区の中心にあるShanghARTに向かった。ラウラ女史が資料を用意してわれわれを待ち、ShanghARTの作家の作品を検討し、宋涛(ソンタオ)、楊振忠(ヤン・ジェンジョン)のアトリエに伺う約束を取る。午後4時同地区のBizArtで夥しい数の作家資料を浴びるように見る。夕刻7時には以前森美術館にいた金女史と会食。上海は多くの美術館が建設中ということだが、彼女はそのひとつを任されているという。
3月7日10時、別の展覧会の出品を依頼している楊福東(ヤン・フートン)が、最近移り住んだ高級アパートメントに向かう。30階建ての程のアパートメントが林立し、亜熱帯風の植栽が施されている様は、何とも不思議な光景で、楊福東のエキゾチックなフィルム作品とも見紛うような風景とも言える。自宅はまるでIT長者のような趣向だが、大きな液晶画面に映し出される作品には見入ってしまう。「中国展」の有力な候補であることも間違いない。14時、人民公園の真ん中にある上海現代美術館に表敬訪問。館長のヴィクトリア・ルーが不在だったが3階にあるイタリアン・レストランで複数のキュレーターの歓待を受ける。展示していた作品から前日にShanghARTやBizArtで資料の中で見ていた作家の作品を確認することもできた。17時、これも別の展覧会の出品を依頼している邱黯雄(チウ・アンション)と同公園のスタバで待ち合わせて、展覧会出品の確認を取る。
3月8日10時、一昨日に約束した宋涛(ソンタオ)のアトリエに向かう。ShanghARTで見せてもらっていたのは写真作品だったが、ジ・ウェイユと鳥頭(バード・ヘッド)というユニットを組んで、興味深いビデオ作品を作っていた。13時、楊振忠(ヤン・ジェンジョン)のアトリエに向かう。森美術館でも紹介された有名な作家だが、ビデオ作品ばかりでなく機知に富んだ立体作品を制作している。夕刻に北京に発つ前に、アメリカから帰国したという情報が入ったジャン・ファンのアトリエに向かう。5,000平米あるというその広大なアトリエに驚嘆する。巨大な立体作品、ミニマルな絵画作品、工芸的な立体作品、巨大な版画作品等、様々なメディア別に分けた工房にはそれぞれ10名程のアシスタントが制作に携わっている。さしずめジャン・ファンはプロデューサーといったところであろうか。
3月9日、10時、中国の若き敏腕批評家である皮力(ピーリー)が運営する芸術地区(その名もユニヴァーサル・スタジオ)に伺い、中国現代美術界の講義を受ける。1980年代以降の歴史的な変遷を辿った中国現代美術展は未だ開催されたことはなく、実施する意味はある、と鼓舞された。14時、美術評論家黄篤(ホアン・ドゥ)に、ホテルのラウンジで「中国現代美術展」の枠組みを尋ねる。歴史回顧的な展覧会は、既にアメリカ、ドイツで行なわれている。もっと編集された展覧会を考えるべきだと諭される。18時、夕食を批評家でもあり映像作家でもある歐寧(オウ・ニン)と。今度は、美術だけではなく同時代の文学、映画、ダンスを見るべきだという。特に80年代の詩人北島(ペイダオ)は重要だという。
3月10日、午前中に朝陽区に住む大コレクターの倉庫を訪問する。その壮大なコレクションに唖然とする。前日迄に美術批評家に聞いていた作品も散見する。14時、老練な美術評論家・栗憲庭(リ・シェンティエン)宅に訪問。何も知らないのだね、という雰囲気で、中国の70年以降の美術の講義を受ける。プーアール茶が美味しかった。16時、栗憲庭の裏手に住む方力釣(ファン・リジュン)の大きなお屋敷風のアトリエを訪れる。夕刻、ファン・リジュンの経営するレストランに。雲南省の料理で、何を食べても辛く、味がわからない。
3月11日、午前中に北京大山子芸術区「798」の美術書店で中国現代美術関係の図書を大量に買い求める。その多くは未だネット購入はできない。お昼、同地区で開館準備をしている美術館準備室のようなギャラリーを訪ね、そのキューレーションを行なっている費大為(フェイ・ダウェイ)に、その広大な美術館の最初の展覧会展示計画をスライドで作品を見ながら講義を受ける。
3月12日、10時、国立中国美術館へ表敬訪問。大中国の美術に於ける国家戦略のようなことを拝聴。開催中のアメリカ美術300年展の規模に驚く。グッゲンハイム美術館がすべてアレンジしたらしい。午後2時、中国におけるコンセプチュアル・アーティスト、グー・ダーシンのアトリエに向かう。外からの情報もなく、独自に85年頃から他の作家とグループを組んでアート&ランゲージのような仕事をしていたことに驚く。
3月13日、北京最後の日に、再び「798」へ。そこで偶然に建畠館長が横浜トリエンナーレに推薦した孫原+彭禹(スン・ユエン+ペン・ユー)に出会う。その地区内にアトリエを持っているという。いわゆる死体アーティストである。彼等も今度の展覧会に出品しいただく有力な候補となることは間違いない。
今回の調査は予備的なもので、持ち帰った資料を整理し、次回はより多くの作家に会いに行くことになるだろう。もちろん、歴史的な回顧展にするのか、個々の作家の独自性を見せていくのか、どのような歴史的背景を説明するのか、また政治的な表現に対してどの程度まで開示することが可能なのか等、基本的なレベルでの問題は山積している。目前に控えた展覧会の準備をする中、意識は随分中国に傾いている。
[なかい やすゆき]
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