通常の展覧会担当であれば、展覧会が始まれば少し余裕ができるはずであるが、今回の「もの派−再考」では、並行して開催された移転一周年を記念した戦後日本美術を考えるシンポジウムばかりではなく、「もの派」展の講演会、公開制作、日々変化する作品の保持と記録と修復の調整、展示解説等で忙殺され、資料の整理も追いつかないまま、現在は作品の撤収・返却行脚の調整へと推移し、年末年始と返却行脚の日々が始まる。この間隙を縫うように、今後の展覧会の準備も始まっている……。以上、外へ動けない言い訳をしているのだが、それでも自らが準備したソウル市美術館で開催している「City_net
Asia 2005」を見ないで済ませることは許されるはずもなく、先日、1泊2日という日程でソウルを訪れた。前回、その図録に掲載した私の文章を提示したが、これではこの展覧会の意図を伝えることはできない。そこで以下に同展図録にソウル市美術館の上級学芸員が記していた文章を提示しよう。その文章を読んでいただければわかるように、この展覧会は新しい形の国際展を模索したものである。しかも、東アジアで経済的発展を遂げながら、文化に於いては西欧化と自国の美術の展開に軋轢を同様に感じている都市の美術館から発信する、という目的を持ったものである。であるが故に、この展覧会は、例えば「福岡アジア美術トリエンナーレ」等と比べても規模の小さいものではあるが、よりアクチュアルな問題を提起できる場所として展開していく可能性を持っている。