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プライバシーステートメント
学芸員レポート
札幌/鎌田享福島/伊藤匡東京/南雄介|大阪/中井康之|山口/阿部一直
「City_net Asia 2005」
大阪/国立国際美術館 中井康之
日本ブース 宮永愛子
日本ブース 国谷隆志
中国ブース SHEN Shaomin
韓国ブース LEE Gang-woo
台湾ブース HUNG Y
台湾ブース HOU I-ting
 通常の展覧会担当であれば、展覧会が始まれば少し余裕ができるはずであるが、今回の「もの派−再考」では、並行して開催された移転一周年を記念した戦後日本美術を考えるシンポジウムばかりではなく、「もの派」展の講演会、公開制作、日々変化する作品の保持と記録と修復の調整、展示解説等で忙殺され、資料の整理も追いつかないまま、現在は作品の撤収・返却行脚の調整へと推移し、年末年始と返却行脚の日々が始まる。この間隙を縫うように、今後の展覧会の準備も始まっている……。以上、外へ動けない言い訳をしているのだが、それでも自らが準備したソウル市美術館で開催している「City_net Asia 2005」を見ないで済ませることは許されるはずもなく、先日、1泊2日という日程でソウルを訪れた。前回、その図録に掲載した私の文章を提示したが、これではこの展覧会の意図を伝えることはできない。そこで以下に同展図録にソウル市美術館の上級学芸員が記していた文章を提示しよう。その文章を読んでいただければわかるように、この展覧会は新しい形の国際展を模索したものである。しかも、東アジアで経済的発展を遂げながら、文化に於いては西欧化と自国の美術の展開に軋轢を同様に感じている都市の美術館から発信する、という目的を持ったものである。であるが故に、この展覧会は、例えば「福岡アジア美術トリエンナーレ」等と比べても規模の小さいものではあるが、よりアクチュアルな問題を提起できる場所として展開していく可能性を持っている。

「アジアの公共美術館:その美学的パラダイムの実現に向かって」(部分訳)
パク・チェオン・ナム(ソウル市美術館上級学芸員)

 アジア現代芸術プロジェクトである「シティ・ネット・アジア展」は、2003年にソウル市美術館が、アジアの主要都市にある公立美術館と相互に交換し協力することを通じて、アジア芸術の可能性を高め、公立美術館という公的機関の美学的パラダイムを実現するために創設した。このビエンナーレ・プロジェクトは、韓国のソウルを含めた4つのアジアの国々が参加し、アジアの現代美術を長期間研究しようというものである。この展覧会のタイトルのヒントとなったのは、このプロジェクトが、世界中で開催されているアジアの現代美術展とは異なり、アジアを交差する都市間のネットワークを創造しようというものであった。換言すれば、それは、アジアの主要な都市に位置する公的な美術館の交換と関係を、より促進させようという計画を実行しようとするものなのである。このプロジェクトの最も重要な点は、各都市の公的美術館というインフラストラクチャーと先取りされたそれらのネットワークを通じて、相乗効果による創造と、能率的な制御を求めるところにある。このような努力を通して、過去には官僚的と称されていた美術館の運営体系は、独立した機関として高められていくのである。公的美術館は、最終的には、自らの方向性を決定する能力を確立することができるだろう。
 同様のことは、各国の地方文化の中心を担う地方の公的美術館においても当てはまる。それらは、他の地方との僅かな違いによって堅実に効果を遂げ、芸術や文化の交流を促進し、地方の芸術家を、自国の公的美術館間のネットワークを通じて中央の舞台や他の地方の公的美術館に紹介している。より以上にこれらの地方の公的美術館は、自分たちの国の芸術や文化の促進を担っているのである。彼らは、地方の美術館独自では担うことのできない莫大な資金の必要な大規模な国際展を共催することによって、殆ど経験することができないような重要なオリジナル作品を展示し、多くの地方在住の市民にその傑作を紹介する公的供給源としての重要な役割をまた担うのである。このプロジェクトの目的は、最終的には、地方の公的美術館のこのようなネットワークを、いくつかの国家間で確立し、アジアを横断する公的美術館で応用されることにある。確かに、このような計画は一夜にして成し遂げることはできない。それは、多くの対話や時間そして努力といった長期間のプロセスが要求されるだろう。これらの理由と信念が基盤となって、この展覧会は「アジア現代芸術祭」ないしは「アジア現代美術展」と題されることなく、そして隔年毎に開かれるにもかかわらず「ビエンナーレ」と名付けることもなかったのである。その代わりに「アジア現代芸術プロジェクト」と称している。この興味深く重要なプロジェクトはアジアに公的な美術館が存続する限り続くであろう。それ故、ある一定期間で完結するようなプロジェクトとは異なり、これは継続するプロジェクトなのである。
 このアジア現代芸術プロジェクト「シティ・ネット・アジア」の組織と進行は、アジアを交差する都市に在る公的美術館のキュレイターによって進められる。各々のキュレイターは、自らの都市のキュレイターとして責任をもって務め、自らの視点によってソウル市美術館のプロジェクトを担うキュレイターとしてプロジェクトの全体テーマと構成を共有する。このことが基本となって、各々のキュレイターは展覧会の全体的な業務、各々のテーマや作家の選択、それらの準備、作品の設置等を含めて行なう。それ故、展覧会全体を覆うような統一テーマは存在せず、4つの展覧会が違った声を発生し、その芸術の言葉を通して、各々の都市の様々な論点を見せるのである。これが、総合的な芸術監督が展覧会のテーマを決定しプランを立て作家を選択する、ビエンナーレのような通常の国際的な展覧会と違う点である。
 そして、今、第2回目のプロジェクトが起動したのである。大阪、上海、台北そしてソウルが「シティ・ネット・アジア2005」に参加した。それらの参加した都市、美術館、キュレイターは、各々の展示では僅かに変化しているだろう。先に述べたように、その展覧会全体を通じたテーマは存在していない。われわれは「アジアの未来」「アジア芸術のアイデンティティ」「アジア芸術とは何か」といった常套的なテーマを避けてきた。また、韓国では、ある種の流行として、韓国らしさという試みがあり、韓国芸術のアイデンティティの発見や、韓国らしさの探求があった。しかしながら、このプロジェクトでは、およそ40人のアジア作家の芸術作品の制作手法に関連する問題を提起し探求している。彼らを取り囲む様々なシステムの議論のレベルを上げ、その議論のレベルに、芸術家と同様に市民も、アジアの都市文化の共生者として、目撃者として興味を持つのである。
 このプロジェクトでは、4つの問題が提起された。上海(中国)の「二元的な未来」は、不確実な未来と同調した二元的な現在を強調している。大阪(日本)の「儚さの美学」は、人類が言語と呼ばれる概念的なツールを採用して使用したときに人々が忘れた豊かな特質の未知の世界を喚起している。台北(台湾)の「遅さへの賞賛」は、大衆文化の流れと新しいスタイルで氾濫させられた最高のハイ・スピードの時代に対抗した美学を求めている。ソウル(韓国)の「幻影のアイコン」は、ユニークなアイコンを通じて同時代の文化を検討するのである。これらの作家たちの表わす芸術言語の違いを認識し、我々は、アジアのこれら4つの都市からの芸術家の作品を通じて、相関的な適性および芸術的な感性に注意を払うべきである。このプロジェクトは、対立する感情と観点を応用することにより、アジア外部ではなくアジア内部から、アジア芸術の原因と結果を分析する良い機会となるであろう。それはグローバルでありローカルなのである。

会期と内容
●City_net Asia 2005
会期:2005年10月5日〜11月20日
開催場所:ソウル市立美術館
Address : 37 Seosomun-dong, Jung-gu, Seoul 100-813, Korea Tel. 82-2-2124-8801

[なかい やすゆき]
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