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大阪成蹊大学近くの公園 |
自らをリアリステック・ペインターと呼ぶフランク・ブラジガンの関心は、カンヴァスにではなく私たちの生活に向けられる。ブラジガンは、古くなった椅子、テーブルなどの家具から、建物の外壁や電車までをカラフルに彩り、それらを再び日常に差し戻す。それら色鮮やかに塗られたものたちは、機能はそのままに、これまでとは違ったポップで楽しげな雰囲気をまとい始める。
ブラジガンは、京都府長岡京市にある大阪成蹊大学に滞在して制作を進めた。ひとつは、大学に隣接する公園の遊具やベンチを色鮮やかに塗り替えるというものである。その公園にあったジャングルジムやブランコ、シーソーは、もともと青と赤に塗られていた。これは各地の公園の遊具にも見られる色で、安全性が重視される公共の遊び場では、この色は周囲の環境から際立ち、ぶつかる危険を避けるのかもしれない。だからこの公園は、他の公園と特に変わることのない、典型的なポケットパークのようであった。しかしブラジガンと学生たちが多彩な色に塗り上げた後では、そこはどこか特別な場所になった。施された色は決して派手なものではなく、むしろやや落ち着いたパステルカラーの組み合わせである。それらの色は、強烈な色彩でその場に異化作用を起こすのではなく、その環境になじみながら、しかしこれまでとは別の楽しげで柔らかな調子を与えていた。
もうひとつは学内のギャラリー〈space B〉に展示されたものである。ブラジガンは滞在中に見出した台車、シャベル、マンホール、リヤカー、足場などを赤と白に塗り替えてそこに並べた。民家の庭にあったものを借りてきたというブランコ以外は、日常の作業に用いられるものばかりであり、それらは展示が終わったあとにはもとの場所に戻されるという。赤と白に塗られたシャベルやリヤカー、足場などが再び日常の中で用いられる場面を想像すると、どこか愉快であり、作業そのものも楽しくなりそうである。
ギャラリーの二階にある小さなスペースでは、弁当箱のプラスティック容器が、今度は真っ黒に塗られたものが並べてある。もともと黒であったものも含めて、同じ黒の塗料で塗られたプラスティックの弁当箱は、その無個性さ、そっけなさをさらに強調するようで、カラフルに塗られた作品同様に、ブラジガンの日常に対する関心と遊び心を一捻りした形で窺うことができる。
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