小吹隆文/福住廉 |
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4/21〜4/25 |
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鴻池朋子 展 隠れマウンテン&ザ・ロッジ
4/16〜5/28 ミヅマアートギャラリー・ミヅマアクション[東京] |
鴻池朋子の新作展。画廊が入居する古いビルを独立峰に見立て、道中で作品を鑑賞させながら、頂上を目指して登山させるという設定だ。中腹のベースキャンプにあたる2階のミヅマアートギャラリーでは巨大な襖絵などが展示されていたが、ここに描かれた山塊は頂上部が見切れており、その山頂の立体作品が5階のミヅマアクションで展示されていた。屋上にはビバークテントが設営され、天井部から下に向けて吊り下げられた映像作品を寝転びながら鑑賞させるという見せ方も面白い。これまでの鴻池作品と同様に、ひじょうにファンタジックで想像力が大いに刺激される作品だったが、その一方で今回はその夢物語を覚醒させるようなリアリスティックな仕掛けも用意されていた。下山のときに眼に入るように壁に貼られた昔の新聞記事のコピーは、谷川岳の絶壁で息絶えた遭難者を収容するためにザイルを銃弾で打ち抜き遺体を落とすというじっさいの出来事を伝えたものだ。登山のロマンティシズムと芸術のそれを重ね合わせたうえで、基本的にはその夢物語に乗りつつも、しかし同時にそれらを根底からひっくり返すような視点も盛り込んでいる。アートという甘い水と現実の冷や水が入り乱れた、近年まれに見る、素晴らしい展覧会だ。
[4月21日(木) 福住廉] |
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英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展
4/25〜7/13 森美術館[東京] |
ターナー賞の受賞者による作品を一堂に集めた展覧会。デミアン・ハーストやティルマンス、スティーヴ・マックィーン、ダグラス・ゴードン、マーク・ウォリンジャーなど23名が参加した。広い会場のわりに参加作家が少ないせいか、この美術館の展覧会としてはややおとなしい印象が否めないが、個別に見れば、女装の陶芸家グレイソン・ペリーや象の糞で絵を制作したクリス・オフィリ、警官の集団をただ60分間座らせた映像作品などを見せたジリアン・ウェリングなどが光っていた。
[4月24日(木) 福住廉] |
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サスキア・オルドウォーバース
4/25〜7/13 森美術館ギャラリー2[東京] |
「ターナー賞」展と同時期に同会場で行なわれている展覧会。CG映像にモノローグを組み合わせた映像作品2点を見せている。CG映像というと、とかく大味で過剰なカメラワークがうざったいことが多いけれど、この映像作品はどちらかというと静的で、軟体動物のような柔らかい動きが楽しめる。
[4月24日(金) 福住廉] |
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太田三郎 HIROSHIMA 1990-2008/有隣荘・太田三郎・大原美術館
3/25〜5/11 大原美術館/4/25〜5/11 有隣荘[岡山] |
大原美術館では、原爆をテーマにした諸作品を紹介。なかでも、日韓約1150ヵ所の郵便局の消印を捺した切手を地図上に配した《Stamp-Map of Japan and Korea》と、折鶴をテーマにしたインスタレーション《広島の折鶴プロジェクト》は圧巻だった。一方、有隣荘では、太田三郎自身と大原美術館、大原家が不可分に融合した実にユニークな世界が出現。1階にはわらぐろ(積み藁)や稲をモチーフにした作品(地元の子供たちとの共同制作)や大原美術館所蔵品とのコラボレーションが展示され、2階には太田が娘さんから送られたメッセージカードや古着のアロハ、食物の種を盛ったお膳、制作途中の作品が置かれた机などが、まるで自室の延長のように展示されていた。それらひとつひとつに、美術家としての太田、家庭人としての太田、大原美術館、大原家を結び付ける意味付けがなされていたのはお見事というほかない。太田三郎と大原美術館、両者の組み合わせでしか起こり得ない一期一会の醍醐味をしっかり堪能した。
[4月25日(金) 小吹隆文] |
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