2019年08月01日号
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《ベルリン・ユダヤ博物館》ダニエル・リベスキンド

Jewish Museum, Berlin, Daniel Libeskind

ジューイッシュ博物館と呼ばれる施設はヨーロッパとアメリカの各地に存在し、ユダヤ人の歴史・宗教・文化の展示を通じて民族的アイデンティティを代弁する存在となっている。なかでも、建築と展示の両面で最も注目を集めるのがベルリンの《ユダヤ博物館》である。《ユダヤ博物館》はベルリン市中心部のクロイツベルクにあり、高等裁判所だった旧館と2001年にオープンした新館からなる。新館はユダヤ系アメリカ人の建築家ダニエル・リベスキンドが設計し、細長いビルが敷地内をジグザグに横切る複雑な形をした建物は、上空から見ると引き裂かれたダビデの星を表現している。さらに、外壁は光るチタン亜鉛合金の板で覆われ、切れ目のような細長い窓が不規則に開いている。新館と旧館を結ぶ「軸」と呼ばれる地下通路は、床が傾いており、来場者は不安定な感覚のなかでユダヤ人の迫害の歴史を学ぶことになる。また、建物の内部を貫通している何もない空間である「ヴォイド」や、「ホロコーストの塔」と名づけられたがらんどうの空間は、強制収容所におけるユダヤの迫害の歴史を連想させる設計になっている。このように、ベルリンの《ユダヤ博物館》は、文字どおり切り刻まれたユダヤの歴史を、建造物と展示の相乗効果でドラマチックに表現しており、歴史の客観的な提示を目指すホワイト・キューブ型の博物館とは一線を画した刺激的な空間である。その一方で、設計者による特定のメッセージが前面に押し出されることは、複雑で多様な「ユダヤ」の記憶が、ひとつの強烈なメッセージに集約されてしまうという危険性もはらんでいる。

著者: 荒木慎也

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