2020年11月15日号
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《4分33秒》ジョン・ケージ

4'33", John Cage

ジョン・ケージ(1912-92)が1952年に作曲したこの曲は、同年8月29日、ニューヨーク州ウッドストックの野外舞台にてデヴィッド・チュードアによって初演された。20世紀以降の芸術思潮において今もなお議論されている作品のひとつ。第1楽章33秒、第2楽章2分40秒、第3楽章1分20秒からなる3楽章構成。タイトルの「4分33秒」は楽曲全体の長さを表わす。現在最も参照されている楽譜は61年にペータース社から出版された「TACET(休止せよ)」と印字された版だが、初演時の楽譜を89年にチュードアが復元した大譜表版、線を時間の長さに読み替える空間記譜(Proportional Notation)版(R・ラウシェンバーグの「ホワイト・ペインティング」との関連がしばしば指摘される)など、複数の版が存在する。禅やインド哲学といった東洋思想に傾倒していたケージは、48年頃から『易経』によるチャンス・オペレーションを用いて音高・強弱・音価等を決定する「易の音楽(Music of Changes)」に着手しており、《4分33秒》もすでにこの時期に着想していた。《4分33秒》の作曲にも『易経』が用いられているものの、ここでのケージの関心は音楽の持続、つまり時間の持続とそれによる構造と形式に特化されている。「TACET」の指示のもと、奏者が音を鳴らさずとも一定の時間の枠組内にさまざまな音が否応なく生じる状況は、絶対的な静寂の不可能を暴くと同時に、音、静寂、騒音、作曲、演奏、聴取のあり方について問題提起を行なった。それはまた、人間と周囲の環境との関係に対する問いかけであり、のちのアンビエント音楽、フィールド・レコーディング、サウンド・アートなどに繋がっていく。

著者: 高橋智子

参考文献

  • 『サイレンス』, , ジョン・ケージ(柿沼敏江訳), 水声社, 1996
  • Silence, , John Cage, Wesleyan University Press, 1961
  • No Such Thing as Silence: John Cage's 4'33", , Kyle Gann, Yale University Press, 2010

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