2019年06月01日号
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「センセーション」展

“Sensation: Young British Artists from the Saatchi Collection”

英国の著名コレクター、チャールズ・サーチ所蔵のイギリスの若手アーティスト42人、作品110点によるグループ展で、1997年9月から12月にかけてロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで開催された。翌年ベルリン現代美術館、翌々年ニューヨークのブルックリン美術館に巡回。出品作家の多くは、80年代にゴールドスミス・カレッジの学生だった作家を中心とするYBAs(Young British Artists)と呼ばれる若手アーティストで、ダミアン・ハースト、ジェイク&ディノス・チャップマン、トレイシー・エミン、サラ・ルーカス、ゲイリー・ヒューム、マーカス・ハーヴェイ、クリス・オフィーリらが含まれた。YBAsの作家は、芸術的規範やブルジョワ的モラルを攻撃し、労働者階級の文化を取り込む挑発的でショッキングな表現で、この頃すでに国外で広く知られていた。「センセーション」展には、これらのイギリスの若手アーティストを、王立の芸術機関で紹介して周知させる目的があり、これによって幅広い観衆の目に触れることになった。そのため同展に対してはマスメディアでの反響や批判も大きく、ロンドンでは子供のマネキンの顔の一部を性器にすげ替えたチャップマンの彫刻や、連続少年殺人事件の犯人の顔を子供の手形で描き出したハーヴェイの絵画に対して表現の倫理性が問われ、ニューヨークではルドルフ・ジュリアーニ市長(当時)が、象の糞を使用したオフィーリのコラージュ絵画《聖母マリア》を一部の人々の信仰の侮辱にあたるとして助成金のカットをほのめかし、文化人を巻き込んだ論争が起きた。他方、ひとりの個人収集家のコレクションで構成された同展は、個人資産である作品の価値を上げ、資本家であるサーチの影響力を増大させるという波及効果もあり(これを理由にオーストラリア国立美術館は同展の巡回を取りやめた)、サッチャリズム経済のイギリス文化が、公的援助よりも民間の資本に委ねられ、相互依存していることも明白になった。この構図に、社会的ラディカリズムを装いつつ新自由主義経済の恩恵を受けていたYBAs世代の特性も見られると言えよう。

著者: 中嶋泉

参考文献

  • Brilliant! New Art from London(exh. cat.), Stuart Morgan et al., Walker Art Center, 1995
  • Sensation: Young British Artists from the Saatchi Collection(exh. cat.), Norman Rosenthal et al., Thames and Hudson, 1997
  • Unsettling 'Sensation': Arts Policy Lessons from the Brooklyn Museum of Art Controversy, Lawrence Rothfield eds., Rutgers University Press, 2001
  • High Art Lite: British Art in the 1990s, Julian Stallabrass, Verso, 2006

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