2019年12月01日号
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『センチメンタルな旅』荒木経惟

Sentimental Journey, Nobuyoshi Araki

荒木経惟が1971年に私家版として出版した実質的なデビュー写真集。結婚式の記念写真が印刷された表紙には妻陽子の手書き文字でタイトルと「1000部限定 特価1000円」と書かれており、序文として私小説家ならぬ「私写真家宣言」が挿入されていた。京都・九州への新婚旅行の道程を撮影したもので、出発から旅先での観光、旅館での性行為の場面などが収録されているのだが、新婚旅行にもかかわらず全編に濃厚な死の気配が漂っている。以降、陽子は荒木にとって最も重要な被写体となっていくものの、そうした関係も90年の陽子の死によって突然終わりを迎える。91年、『センチメンタルな旅』が『センチメンタルな旅・冬の旅』として再構成され、陽子との最期の日々の写真が収録された。後半部の「冬の旅」のパートは陽子が悪性の子宮筋腫で入院してから死を迎えるまでを、日付入りのコンパクト・カメラで撮影した写真日記の体裁がとられており、陽子のポートレイトをはじめ、病院への道程、病室、自宅、葬儀場などで撮影された写真が荒木のコメントとともに編まれている。夫婦間の私的な物語が普遍的な物語へと昇華されるかのように、同書はベストセラーとなり、後の「私写真」ブームのバイブルともなった。また、続編として『続センチメンタルな旅沖縄編』(1971)、『10年目の「センチメンタルな旅」』(1982)がある。

著者: 小原真史

参考文献

  • 『荒木経惟 生と死のイオタ』, 伊藤俊治, 作品社, 1998
  • 『実をいうと私は、写真を信じています』, 荒木経惟, 日本図書センター, 2010
  • 『荒木!「天才」アラーキーの軌跡』, 飯沢耕太郎, 小学館文庫, 1999
  • 『センチメンタルな旅・冬の旅』, 荒木経惟, 新潮社, 1991
  • 『10年目のセンチメンタルな旅』, 荒木経惟・陽子著, 筑摩書房, 1992

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