2019年08月01日号
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『レ・ソワレ・ド・パリ』

Les Soirées de Paris(仏)

「レ・ソワレ・ド・パリ」という言葉は、美術の文脈では次の二つのことを意味する。ひとつは、1924年5月17日-~30日までパリのシガール劇場においてエティエンヌ・ド・ボーモン伯爵が開催したバレエ公演のこと。もうひとつは、アンドレ・ビリーとギヨーム・アポリネールによって12年にパリで創刊された文芸・美術雑誌のことである。ここでは後者について言及する。この雑誌は、もともとレオナルド・ダ・ヴィンチの《モナリザ》盗難の嫌疑を掛けられていたアポリネールを支援する目的で、フランスの小説家のアンドレ・ビリーを中心とした文学者たちによって創刊された月刊誌である。創刊からわずか2年後の14年に廃刊となるが、その間に刊行された雑誌を第一期(1912年2月~13年6月/1号~17号)と第二期(1913年11月~14年8月/18号~26・27合併号)とに分類することができる。第一期は、ビリーとアポリネールが編集長を務め、創刊に携わった他の文学者たち、アンドレ・チュデスクやルネ・ダリーズ、アンドレ・サルモンらを中心に寄稿がなされた。この第一期時代は、アポリネールの代表作である『ミラボー橋』や美術批評の『キュビスムの画家たち』が発表されたことからもわかるとおり、本雑誌は彼にとって実験的な場であり、後世から見るとアポリネールの以後の活躍を予見する記念碑的な場であった。しかしアポリネールの試みはビリーらの意図するところではなかったため、彼らの間に運営方針に関する齟齬が生じ、ビリーはこの雑誌から身を引いてアポリネールに委ねることとした。そして新体制で迎えた第二期において、この雑誌はキュビスムの複製図版を掲載するなど、ますますキュビスムをはじめとする前衛的美術の応援に力を入れ、また文学的にも実験的試みが多くなされるようになったのである。この雑誌は、美術史研究においてアポリネールとキュビストたち、また当時の前衛美術の様子を探るうえできわめて重要な資料となっている。

著者: 小野寛子

参考文献

  • 『キュビスムの画家たち』, ギィョーム・アポリネール(斎藤正二), 緑地社, 1957
  • 『岩波世界の美術 キュビスム』, ニール・コックス(田中正之訳), 岩波書店, 2003
  • Les Soirées de Paris: recueil mensuel, Paris, 1912-1914, Guillaume Apollinaire, André Billy, René Dalize, André Tudesq, André Salmon, Charles Perrès, Serge Férat, Hélène Oettingen, et Jean Mollet, Paris: [s.n.], 1912-1914

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