2020年10月15日号
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『人工地獄 現代アートと観客の政治学』クレア・ビショップ

Artificial Hells: Participatory Art and the Politics of Spectatorship, Claire Bishop

美術史家のクレア・ビショップによる、2012年に出版された書籍。20世紀から今日までの美術史全体を「参加」という観点から検証していくもので、いわゆる「参加型アート」「ソーシャリー・エンゲイジド・アート」をめぐる議論を、それぞれの「現場」のケーススタディだけではなく、美術史や美術批評という互いに摩擦を生じさせ合う実践を含めて行なおうとした点が白眉である。本書が言及する事例は、東欧や南米など、西洋中心的な研究や視点からはこれまであまり省みられてこなかった地域を含み(アジアの事例は出てこない)、考察の範囲も演劇、パフォーマンス、コミュニティ・アート、美術教育と多角的である。本書が描き出すのは「アーティストと鑑賞者」という旧来の二項対立が絶えず失効し続けている様であり、芸術の「社会的転回」が単なる一時的な現象ではないという事実である。とりわけ、アーティストが自身以外の人物にパフォーマンスを「委任」する「デリゲイテッド・パフォーマンス」に関する議論は、現行の資本主義分業体制において、また非物質的労働が全面化する社会において、芸術と労働、ひいては生の在り方を捉え直すうえで重要である。

著者: 長谷川新

参考文献

  • 『人工地獄 現代アートと観客の政治学』, , クレア・ビショップ(大森俊克訳), フィルムアート社, 2016

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