2019年06月15日号
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『日本の近代美術』土方定一

Modern Art in Japan, Tei’ichi Hijikata

日本近代美術史を通史として平易に述べた入門書。1966年に岩波新書として刊行されてから読まれ続け、2010年に岩波文庫として再版された。著者の土方定一(1904-80)は、東京帝国大学文学部美術史学科を卒業し、31年から32年にかけてドイツに遊学した。はじめ日本近代文学を研究していたが、後に美術史研究および美術批評に転じた。51年に神奈川県立近代美術館の副館長となり、65年から同館館長を務めた。同館が行なった展覧会とコレクション形成は、土方による日本近代美術史への独自の視点を反映しており、著書の『日本の近代美術』にはそれがよく表われている。その視点とはすなわち、日本画と洋画を別次元のものとしてではなく同時代の現象として捉え、近代美術の始原を明治からではなく江戸中期に定め、中央の権威として存在した美術家ばかりではなく、周縁あるいは反中央の美術家を大事にし、そして、美術史を単なる造形の歴史としてではなく一種の精神史として描き出す、といった点に要約できる。とりわけ社会思想と美術の関わりに目を配り、同書においても、明治期の小川芋銭と幸徳秋水とのつながりが論じられ、戦時下における松本竣介による静かな反戦の抗議や新人画会の活動を高く評価した。ほかに『ドイツ・ルネサンスの画家たち』(美術出版社、1967)等、ヨーロッパ美術を論じたものもある。

著者: 足立元

参考文献

  • 『日本の近代美術』, , 土方定一, 岩波書店, 2010
  • 『ドイツ・ルネサンスの画家たち』, , 土方定一, 美術出版社, 1967
  • 『土方定一美術批評1946-1980』, , 土方定一著、匠秀夫ほか編, 形文社, 1992
  • 『土方定一著作集』全12巻, , 土方定一, 平凡社, 1976-78
  • 『日本プロレタリア美術史』, , 岡本唐貴、松山文雄, 造形社, 1967

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