2019年06月15日号
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『知覚の現象学』M・メルロ=ポンティ

Phénoménologie de la perception, M. Merleau-Ponty

フランスの哲学者モーリス・メルロ=ポンティ(1908-1961)の主著。『知覚の現象学』(1945)は『行動の構造』(1942)につづく彼の2冊目の著作であり、その後のフランス現象学の展開に決定的な影響を及ぼした。
メルロ=ポンティが同書を発表したのは、いまだフランスにフッサールの現象学が十分に紹介されていなかった時代のことである。そのようななか、メルロ=ポンティはフッサールの未刊草稿を精査するとともに、そこに登場する諸概念を独創的な仕方で練り上げることで、フランス独自の現象学の展開に大いに貢献した。なかでも本書の最大の特徴は、われわれの「身体」および「知覚」に焦点を合わせることで、主観/客観、意識/物体といった伝統的な二項対立を疑い、身体的経験の両義的構造を主張した点にある。このようなメルロ=ポンティの思想が、従来の単純な「鑑賞」(見る主体/見られる対象)のモデルに準じるのではなく、むしろ鑑賞者の「身体」の位相を重視しつつあった戦後美術に影響を及ぼすことになったのはごく当然の成り行きだった。『知覚の現象学』が英訳されたのは1962年のことだが、同書はアメリカ西海岸を中心とするミニマル・アートの理論の形成に少なからぬ影響を与えたとされている。

著者: 星野太

参考文献

  • 行動の構造, メルロ・ポンティ(滝浦静雄、木田元訳), みすず書房, 1964
  • 知覚の現象学, M・メルロ=ポンティ(中島盛夫訳), 法政大学出版局, 2009

参考作品

  • Untitled, ドナルド・ジャッド, 1963
  • Untitled (L Beams), ロバート・モリス, 1965

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