2019年12月01日号
次回12月16日更新予定

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グリッチ

Glitch

デジタル装置のエラー、そのために生じるノイズ、またはそれらを利用して作品を制作する手法のこと。この手法は1990年代半ばの音楽に現われ、偶発的で小さな欠陥を意味する「グリッチ」という語で呼ばれ始める。2000年前後よりK・カスコーンらがこの手法の意義を歴史的に考察していった。カスコーンはグリッチをルッソロの騒音音楽を出発点とする、装置のエラーを利用する手法の歴史の先端に位置づける。刀根康尚が80年代半ばに初めて制作に利用したとされる、CDの音飛びが典型的なグリッチとして知られている。音楽から始まったこの手法は視覚装置のエラーや、装置ではなくデータのエラーの利用にも拡大していった。後者のツールとしてnatoなどのソフトウェアがよく使用された。グリッチの意義としてよく次の点が指摘される。デジタル制作ツールと制作される作品の関係がより密になる傾向に対して、ツールの正規の機能がもつ制限からある程度逸脱すること。そして、装置の通常は隠れた機能を部分的に明るみに出すこと。エラーは装置の完全停止ではなく、ひとつの機能を停止させると隠れていたほかの機能があらわになることがある。また、グリッチは日常に一種の警告として存在するため、人の注意を惹きやすい(BGMが音飛びしたときの緊張感がよく言及される)。ただし、この性質は手法が一般化すると失われてしまう。これらの意義はエラーを利用した手法一般にある程度共通するが、アナログよりデジタル装置のエラーにより顕著に認められる。

著者: 金子智太郎

参考文献

  • Computer Music Journal, 24.4, "The aesthetics of failure: 'Post-Digital' Tendencies in Contemporary Computer Music", Kim Cascone, MIT Press, 2000
  • Bad Music: The Music We Love to Hate, Christopher J. Washburne, Maiken Derno eds., Routledge, 2004
  • Cracked Media: The Sound of Malfunction, Caleb Kelly, The MIT Press, 2009
  • Glitch: Designing Imperfection, Iman Moradi, Ant Scott, Joe Gilmore and Christpher Murphy, Mark Batty Publisher, 2009

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