2019年06月15日号
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サウンド・オブジェクト

Sound Object

英語の「サウンド・オブジェクト」という言葉はいくつかの明確に異なる意味で使われている。本項目はそのうちの二つを解説する。ひとつは特定の聴き方と結びついた音のあり方であり、もうひとつは音を発するオブジェである。ミュージック・コンクレートの創始者、P・シェフェールは3つの音の聴き方を区別した。第一に音と客観的なものを結びつける聴き方(「〜が発する音」「空気の振動」)、第二に音と主観的なもの結びつける聴き方(「〜を意味する音」「心地よい音」)、第三に何とも結びつけない聴き方である。彼はフッサール現象学における現象学的還元の理論を参照して最後の聴き方を「還元的聴取」と呼び、何とも結びつけられない音のあり方を「オブジェ・ソノール」と呼んだ。その英語訳が「サウンド・オブジェクト」である。この概念によって伝統的な楽音と非楽音が区別される以前にある音一般の考察が可能になった。シェフェールは音を音源からはっきり分離できる録音技術、スピーカーを用いた楽曲制作からこの概念の着想を得ている。R・M・シェーファーはサウンドスケープの最小構成要素を指すためにこの用語を借用した(日本語訳は「音響体」)。一方、音を発する造形作品のなかで音響彫刻とも創作楽器ともサウンド・インスタレーションとも区別されるものが「サウンド・オブジェクト」と呼ばれることがある(日本では「サウンド・オブジェ」という英仏混合語も使われる)。例えば、デュシャン《秘められた音に》(1916)、マン・レイ《破壊すべきオブジェ》(1923)などが最初期のサウンド・オブジェクトとしてよく言及される。藤原和道らは「音具」という語をこうした作品を指すために使っている。サウンド・オブジェクトという語はほかにも定義が曖昧なままに、例えばある種の音の形容などに使われている。

著者: 金子智太郎

参考文献

  • Traité des objets musicaux, Pierre Schaeffer, Seuil, 2002
  • 『都市の音』, 吉村弘, 春秋社, 1990
  • 『現代音楽を読み解く88のキーワード 12音技法からミクスト作品まで』, ジャン=イヴ・ボスール(栗原詩子訳), 音楽之友社, 2008
  • Audio Culture: Readings in Modern Music, Christoph Cox, Daniel Warner eds., Continuum, 2004

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